マイ・ギター<その1> 田邊雅啓2004年製作 -続き-

昨日紹介した、ぼくの田邊ギター(2004/JUN/No.172)について少し追記しておこう。
まず材料。表面板はヨーロピアンスプルース。いわゆる松あるいはトウヒである。濃い冬目がはっきり出ている極めて良質のもので、田邊さん曰く「最高グレードのもの」とのことだ。裏板は、音の面からはあえてハカランダにすることもないだとうとの判断で、インディアンローズウッドとした。昨日の写真でわかる通り、裏板中心部には、メープル材で少しオシャレをしてみた。これもぼくからのリクエストである。指板は黒檀で、極めて緻密な良材が使われている。実際、数年を経過した現在も指板表面は滑らかで、伸縮が皆無なのかフレットのバリも出ていない。ヘッド、口輪ロゼッタ、3ホール式のブリッジ等にも高い工作技術を示す美しい装飾が施されていて、見る度にため息がもれるほどだ。糸巻きは米国スローン社製の黒檀ツマミ。塗装は全面セラックのタンポ仕上である。

総じてこの頃の田邊さんの作品は、本格的な製作に取り掛かった彼のモチベーションの高さが随所に現れている。実際、時々メンテナンスでこの楽器を彼に見てもらうとき、「いやあ、いい楽器だなあ」と彼自身がいつも感嘆する。手元にある何本かの楽器の中で、バランスの良さ、和音の分離、豊かな低音の響き、高音のサステインは最も優れているものの1本だ。しかし、どんな銘器でもそうであるように、この楽器にも弱点がないわけではない。この楽器の唯一の弱点は、5弦8~10フレットの音が詰り気味であることだ。このポイントの音だけが十分なサステインが得られず、ボンッと詰り気味に鳴る。これはウルフトーンをFからF#に設定したため、そのオクターブ上の音がデッドポイントなっているためで、どんな楽器にも付きまとう問題だ。多くの製作家がこの問題の解決で悩んでいるだろう。しかし、実際に少し離れて聴いている人には、弾き手のぼくが感じているほど、この部分の音の詰りは感じられないとのことで、右手のタッチを少し工夫して弾くことで、この問題を実質的には回避している。それ以外の音は全ての音域で極めて均一に鳴る。弦はオーガスティンのリーガル(高音)とブルー(低音)を張っているが、音色の統一感も優れ、適度な張りの強さと相まって十分なサステインを確保し、申し分のないマッチングである。

このギターを製作した2003~2004年当時以降、田邊さんの評価は急速に高まり、現在彼の作品を入手するには、2年から3年のウェイティングリストに載ることがまず必要な状況である。しかし、端正な音色でバランスがよく、低音がしっかりとしたギターを望むなら、3年間待つ価値は十二分にあるだろう。

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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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