シューリヒト&VPO ブルックナー交響曲第8番ハ短調



きょうもはっきりしない天気。どうやらあすも雨らしい。しかも気温上昇とか。いよいよ蒸し暑い季節の到来だ。さて、昨晩はミスターS氏のブルックナーを摘み聴きしながら記事を書いたのだが、その折に思い出した第8番を聴こうかと、音盤棚をサーチしてこの盤を取り出した。1963年録音のカール・シューリヒト指揮ウィーンフィルによるブルックナーの8番。だいぶ前に一度記事にしているので再掲しておく。


Schuricht_201605.jpg  Schuricht_BRKNR_8.jpg


ぼくら70年代に学生時代を送った世代のブルックナーファンにとっては、宇野功芳氏の熱烈評論によって、この盤は第8番の名盤としてすり込まれた。ぼくもそのクチではあったが、実際にこの盤を手にしたのは十年程前のことだ。確か大阪出張の折のお馴染みであった梅田の名曲堂阪急東通り店で買い求めた。

第1楽章の出だしからシューリヒトの特性がはっきり出て、音楽はまるで室内楽のように静かに、そして各パートの響きが、さほど優秀な録音ではないにもかかわらず、混濁せずに聴こえてくる。フォルテでも決して大声を上げず、全体のバランスと際立たせるべきパートは何かがしっかりと分かる。開始からしばらくはほとんどテンポも動かず歩みを進めるのだが、弦のピチカートにのってホルンと木管が主題を奏でる第3主題では、グッとテンポを落とし、その後は少しずつテンポが揺れ始め、音楽が動き出す。このあたりはシューリヒトの周到な設計図によるものだろう。

第2楽章はこれぞスケルツォという軽快なテンポで始まる。フレーズを短めに切り、もたれずに進む。まるでレントラーかと思わせるようにレガートでゆっくりとしたカラヤン盤とは好対照だ。作者自身がドイツの野人と称したこの楽章だが、シューリヒトはここでも大声を上げず、無骨さも強調せずに速めのテンポで曲を進め、トリオに入ると一気にテンポを落として素晴らしい効果を上げている。20分を越す第3楽章アダージョも、思いのほか時間が早く過ぎる。もちろんこれはテンポ設定が速いということではなく、シューリヒトの曲の運びが、重箱の隅をつつき細部にこだわって粘り気味に演奏するスタイルと縁遠いからだ。もちろんシューリヒトも細部にこだわっているのだろうが、その部分部分に注力するのではなく、曲の運び、この先にどう進むかという視点で見ているからではないかと思う。終楽章も終始テンポが適切で音楽の流れがいい。

ブルックナーというと、とかく巨大な編成とそこから生み出される壮大なオーケストラサウンドを期待する向きもいるだろうが、この盤の演奏を聴くと、ブルックナーはやはり静かで敬虔な音楽なのだと納得する。やや渋めのブルックナーを楽しみたい向きには好適なアルバムだ。


この盤の音源。
こんな長い曲付き合っていられない…という輩は、第2楽章スケルツォだけでも。15分37秒から。


マタチッチ(1899-1985)&N響による第4楽章。1984年。これがマタチッチ最後の来日となった。涙物だなあ…



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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