イリーナ・クリコヴァ(G)



週末も終わり、明日からまた仕事という日曜の夜半過ぎ。ぼちぼち床につく時間だが、日中の怠惰な午睡が効いてか、目が冴えてしまった。こんなときな強めのリキュールをナイトキャップに…というところだろうが、そこは無粋な下戸につき、渋茶を一杯。ついでにこんな盤を取り出した。


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ロシア出身のギタリスト;イリーナ・クリコヴァのCD。数年間からいくつかのコンクールで優勝し話題になっている若手ギタリストで、廉価盤レーベルのナクソスから3枚のアルバムが出ている。きょう取り上げる盤はそのうちの1枚で、2011年11月に録音されたもの。数年前にも一度記事にした。収録曲は以下の通り。申しわけ程度の付いている<アルハンブラの思い出>に違和感を覚えるが、他はそれぞれに聴かせどころの多い楽しめるプログラムだ。

・J.S.バッハ;無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV 1007
・フェルナンド・ソル;ファンタジア第7番 Op. 30
・マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ;ギター・ソナタ ニ長調 Op. 77
・ホセ・マリア・ガジャルド・デル・レイ;カリフォルニア組曲
・フランシスコ・タレガ;アルハンブラ宮殿の思い出

ひと昔前のギタリストの演奏は曲の難所あるいは肝心なところで必要な音が確保できずに、聴く側も本来の音楽に安心して耳を傾けられないことも多かった。しかし最近の若いプレイヤーにはそういう心配は極めて少ない。クリコヴァもその例にもれず技巧的なレベルが極めて高く安定していて音楽そのものに傾聴できる。更に彼女の愛器;サイモン・マーティーから繰り出される音には浸透力とパワーがあり、しかもそのパワーをよくコントロールしている。

バッハは静かで思慮深い趣きのプレリュードで始まる。この開始を聴くだけでクリコヴァが単なるパワーと技巧だけの奏者ないことは十分わかる。やや遅めのテンポで息の長いフレージングで悠々と奏でられるプレリュードは、まさにプレリュードの名に相応しく、そのあとに続く舞曲群への期待が高まる。よくこのプレリュードを朗々と歌い切ってしまう演奏があるが、ギターであろうとオリジナルのチェロであろうと、やはりここは抑制を効かせて弾くべきだと思うがどうだろう。続くアルマンドも一音一音つぶ立ちのいい音でゆったりと弾き進める。クーラントは技巧の切れの良さがよくわかる弾きぶりで、ときどき繰り出すフォルテも余裕があって好ましい。サラバンドもかなり遅めのテンポで、深い呼吸を感じるフレージングだ。
ソルの幻想曲。やはり名曲だ。序奏に続く変奏曲も他の同時代の凡百の変奏曲とは一線を画す。各変奏が単なる技巧的なバリエーションに終わらず、多彩な和声に彩られ美しい。クリコヴァはもちろん余裕をもってこの曲を弾き進めるが、こうした和声の移ろいも十分感じ取っているのがよく分かる演奏だ。後半のアレグレットで重要な付点音符の扱いもいいし、長い休符前後の間合いなども配慮が行き届いている。
テデスコのソナタはボケリーニへのオマージュという副題が付いているように前古典的色合いの濃い名曲。ここではクリコヴァの技巧レベルの高さとパワフルな音が全開。古典へのオマージュという観点では違うアプローチもあるだろうが、この曲の持つモダンな側面を完全に表現し切っているし、決してパワーで押し切る感じはなく、各楽章の性格もよくその違いを表現していて不足はない。
レイのカリフォルニア組曲は少し前にmixi仲間の発表会であるメンバーが弾いたのを聴いて初めて知った。1985年に書かれた作品で、第1曲のプレリュードなどは一聴してバッハ;無伴奏チェロ組曲を模していると分かる。バロック期の組曲スタイルながら、後期ロマン派から現代ポピュラーへつながる和声を感じていたら、ライナーノーツにバッハとラフマニノフにインスパイアされた曲と記されていて納得した。

ついでながら…この盤のジャケットにはクリコヴァが優勝した2008年のアルハンブラ国際ギターコンクールのロゴが入っている。このコンクールはスペインの量産ギターメーカーであるアルハンブラ社がスポンサーについている。どうりで、もう1枚のCDには使用楽器としてサイモン・マーティーの名が記されているがこの盤にはその記載がない。楽器メーカーであるスポンサーへの配慮だろう。


ドイツのギター販売会社Sicca社のPR動画。2008年作のホセ・マリンで弾くトローバのソナチネ。軽く発音するホセ・マリンだとクリコヴァの強いタッチに負け気味。もっとも、この曲はもう少し軽く洒脱に弾く曲かとも思うが。


テデスコのソナタ第4楽章


カリフォルニア組曲からプレリュード



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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