中本マリ <アンフォゲッタブル>



早いもので八月も下旬。オリンピックもまもなく閉幕だ。 週末は格別のこともなく終了。あすは関東に台風接近の予報。出勤時間帯の天気を案じつつ、さて今宵は日本のジャズを。 リアルタイムの記憶がしっかりある70年代の中本マリのアルバムを取り出した。


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日本の女性ジャズヴォーカルで、ぼくらの世代で思いつく70年代に活躍したのは、笠井紀美子、伊藤君子そしてこの中本マリあたりだろうか。少し前の世代になるとマーサ三宅(古っ!)。もちろん江利チエミもペギー葉山もジャズシンガーのキャリアはあるし、美空ひばりのジャズスタンダードは中々のものだが、ここでは除外しておく。あるい80年代前半に元祖ネクタイ族のアイドルとして人気が出た阿川泰子や真利邑ケイ、秋本奈緒美の名前もあがってきそうだが、ぼくの感覚では、作られたアイドルとしては成功したのだろうが、およそジャズを歌える歌手という認識はない(そう言いつつ、写真のように手元に彼女らの盤があるのが、ちょいと恥ずかしい…)。中では、中本マリはオーソドックスなジャズをドライブ感あふれる歌いっぷりで楽しませてくれた。写真の盤<アンフォゲッタブル>は、当時録音の良さでも知られたインディーズレーベル、TBM:スリー・ブラインド・マイスに録音した彼女のデビューアルバムだ。確か社会人になって給料日にはレコード屋へ行くことが楽しみであった頃に買った。

CEC製ベルトドライブプレーヤーST930のスイッチを入れてアイドリング回転させること10分。メカがひと通り温まり、回転も安定したところで、オルトフォンSPU-Gの針を静かに下ろす。わずかなサーフィスノイズに導かれ、大沢保朗のピアノが短い導入フレーズを奏でる。続いて中本マリのタイム・アフター・タイムが部屋にあふれる。あっと思わず声が出るほどいい音だ。久々に針を落としてみて、あらためて鮮度の高い音に驚いた。録音は1973年9月、当時彼女はまだ二十代後半だったはずだが、随分と落ち着いた声と歌いっぷりだ。上州弁ネイティブのぼくには英語の発音はよく分からないが、世評では当時から彼女の発音は折り紙付だった。音程は文句無くいいし、ロングトーンの後半でかかるヴィブラートも彼女の持ち味で、いい感じだ。バックを固めるメンバーも当時の腕利き揃い。ギター横内章次の名前が懐かしい。しかし、今風のやたらとドライブをかけてノリノリの勢いだけで押してしまう演奏にはなっていないところが70年代的だろうか。クラシックもジャズも時代の様式感は大切だ。あくまでスタンダードをスタンダードの様式で弾き、歌っている。過不足なく安心して聴け、楽しめる。


<ナイト・アンド・デイ> 羽田健太郎他とのセッション。90年代の演奏かな。


1977年のアルバム<MARI>全曲。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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