バッハ<チェロとハープシコードのためのソナタ>



台風10号はかつてない迷走の末、きょうの午後東北地方に上陸した。当地関東は昨夜からきょう午前にかけて風雨が強まったが、大きな被害や混乱もなく、朝の通勤も平常通り。荒れるようなら休もうかと思っていたが、一日しっかり仕事。8時少し前に帰宅した。 さて、昨晩は久々にバッハの器楽曲を聴いたが、その続きで今夜こんな盤を取り出した。


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バッハのチェロとハープシコードのためのソナタBWV1027~1029。ポール・トルトゥリエ(1914-1990)による1963年の録音。ハープシコードはロベール・ヴェイロン=ラクロワ。 トルトゥリエの録音の多くはEMIからリリースされたが、仏エラートにも何枚か録音を残した。これはその中の一枚。手持ちの盤は60年代国内盤LP。十年ほど前、出張の折にしばしば立ち寄っていた大阪梅田の名曲堂阪急東通り店で手に入れた。

60年代半ばの盤は一様に材質が分厚く重い。そして半世紀を経た今でもノイズの少ないいい音を奏でてくれる。まだまだレコードは高価で貴重な品だった品だった時代で、それゆえにコストも手間もかけて丁寧に作られていたこともあるだろう。その後70年代、特にオイルショック以降の70年代半ばからレコードが終焉を迎える80年後半に向け、レコードはどんどん薄くなり、録音技術のデジタル化と相まって、何となく実在感の乏しい軽薄短小的なアイテムになっていった。60年代の盤は、やはりその時期のオーディオセットで聴くのがもっとも相応しい。具体的には二世代くらい昔の、現代的視点からみたらややナローレンジなエネルギーバランスのスピーカで聴くのがベストだ。この盤も以前、ダイヤトーン2S-305(昭和30年代前半の設計)で聴いていたときの印象に比べ、現用のアヴァロンでは少々よそよそしく響く。

さて、それはともかくトルトゥリエのバッハだ。いつもながら彼のチェロの音色は明るく華がある。無伴奏チェロ組曲と異なり、チェンバロを伴って多彩な曲想を展開するのに相応しい音色だ。決して技巧派でならした人ではないので、時折やや音程があやしいところもないではないが、それも音楽的な音程(緊張と解決に伴う音程の取り様)を重視してのことだろう。テンポは中庸だが、第2番の第3楽章アンダンテや、第3番のアダージョ楽章では、ゆったりとよく歌っている。名手ロベール・ヴェイロン・ラクロアのハープシコードも速い楽章では華麗な装飾音も交えながら、明るく華やかにトルトゥリエのチェロを引き立てている。
…と、手放しで礼賛しておいてナンではあるが、トルトゥリエはハープシコードとのバランスをよく考えて弾いているものの、それでもなお、やはりモダンチェロとハープシコードという組み合わせは、少々違和感があるのも事実だ。オリジナルのヴィオラ・ダ・ガンバで聴くとハープシコードとの響きの相性が格段にいいように感じる。モダンチェロにはやはりモダンピアノの方が、この時代の音楽としても、むしろ不自然さを感じないほどだ。このあたりはバッハを聴いたり弾いたりする際、大きく好みが分かれるポイントだ。


第1番ト長調BWV1027 チェロ(バーナード・グリーンハウス)とモダンピアノによる演奏。


同曲。オリジナル通りのガンバとハープシコード。


第1番BWV1027は、トリオソナタBWV1039(フルート2本と通奏低音)が元曲だ。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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