クララ・ハスキル&マルケヴィッチのベートーヴェン第3協奏曲



遅ればせながら短い夏休みを取得。老体もちょっぴりリフレッシュ。年末まで四ヶ月頑張りましょか…と、仕事に復帰したのだが、折からの蒸し暑さやら、いきなりややこしい案件登場やらで、いささか意気消沈。いつもと変わらぬヘロヘロ帰宅となった。嗚呼…。さて、気を取り直して音盤タイム。先回の続きでこんな盤を取り出した。


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クララ・ハスキルによるベートーヴェンの協奏曲第3番ハ短調。イーゴル・マルケヴィッチ指揮ラムルー管弦楽団が伴奏を付けている。1959年録音。手持ちの盤は十年ほど前に廉価盤で出た際に手に入れたもの。同じベートーヴェンのソナタ第17番<テンペスト>と第18番も収められている。この演奏も前回記事にした同じコンビによるモーツァルト第20番と24番の協奏曲に劣らず評価が高い。 前回のLP盤モーツァルトに比べると、CD音源は音の鮮度が格段に上がっている。LP、CDの相違というよりは、CD化に際してのマスタリングの塩梅によるものだろうか。マルケヴィッチ&ラムルー管の音色は柔らかく穏やかではあるが、音の解像度が高く清々かつ堂々と響く。編成もやや大きくしているかもしれない。低音部の安定した響きも十分だし、音場の広がりも申し分ない。もちろんハスキルのピアノの音色も極上の美しさだ。

このハ短調の協奏曲は、同じ調性のモーツァルト第24番に似た印象的なオーケストラの導入部で始まる。第1楽章はハ短調という調性が持つ劇的な悲劇性というよりは、まるで静かに悲しみを堪えているかのように聴こえる。第2楽章も穏やかに歌うし、第3楽章もロンドも勢いに任せて突っ走るような気配は皆無。やや遅めのテンポをとり、オケ、ピアノともに実に丁寧に弾き進めていく。こう書くと何となく手ぬるい演奏のように思われそうだが、そうではない。オケもピアノも一つ一つのフレーズをかみ締めるように丁寧に扱っているといえばいいだろうか。もともとハスキルが持っていた資質に、マルケヴィッチがそれを引き出すようなサポートしているのだろう。

併録されているベートーヴェンのソナタも力で押す演奏ではなく、美しい音色と穏やかなフレージングが生きた演奏だ。あのチャールズ・チャップリンをして、「私の生涯に出会った天才はチャーチル、アインシュタイン、そしてハスキルだけだ」と言わしめた天賦の才に恵まれながら、若くして病魔に冒され、ナチスに追われたハスキルの過酷な人生を思うと、晩年のこれらの演奏を裏付けるものが分かるような気がする。


この盤の音源。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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