アファナシエフのモーツァルト



さて週末金曜日。夕方ヤフーニュースを覗いていたら、CDジャーナルからの情報提供でニュースジャンル<エンタメ>に、「ロシアの鬼才アファナシエフが23年ぶりのモーツァルト録音を発表」というニュースがあった。クラシックネタがネットのニュースに載ること自体珍しい。おそらくプロモーションの一環で所属するソニークラシカルからのプッシュかと。そんなニュースを見たこともあって、久々にこんな盤を取り出した。


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モーツァルトのピアノ曲から短調作品ばかりをピックアップした1枚。ヴァレリー・アファナシエフ(1947-)のピアノ独奏。ヤフーニュースで「1993年の日本コロムビアへのソナタ第14番以来23年ぶりのモーツァルト・ソナタ録音であり」と触れられていた、その録音。手持ちの盤は10年程前からリリースされている日本コロンビアの廉価盤シリーズ<クレスト1000>の中の1枚。一年ほどまえにも聴いているので再掲。収録曲は以下の通り。

 1. 幻想曲 ニ短調 KV397
 2. 幻想曲 ハ短調 KV396(断片)
 3. 幻想曲 ハ短調 KV475
 4. ピアノ・ソナタ ハ短調 KV457 I-Molto Allegro
 5. ピアノ・ソナタ ハ短調 KV457 II-Adagio
 6. ピアノ・ソナタ ハ短調 KV457 III-Allegro assai
 7. アダージョ ロ短調 KV540

このうち今夜はKV.475の幻想曲ハ短調とKV.457のハ短調のソナタを聴く。この2曲は同じハ短調で、出版も2曲を併せて行われたことから、一対の作品として扱われることが多い。KV.475の幻想曲はこの盤での演奏時間が16分を超え、ソナタの方は24分を要している。幻想曲はその名の通り自由な形式で書かれているが、大胆な転調や不協和音を多用した重苦しいとも言えるハ短調の部分と、陽性で屈託のない響きのニ長調の部分とが入れ替わり現われ、テンポも緩急を頻繁に行き来し、独特な雰囲気をかもし出している。そして最後はハ短調のモチーフが重々しく繰り返され、解決しないままソナタハ短調へ引き継がれるかのような効果を上げている。幻想曲がソナタへの規模の大きな導入部として機能するという解釈もうなづける。

幻想曲を受けてハ短調ソナタの第1楽章は決然とした主和音の分散和音のモチーフで始まる。このハ短調ソナタはモーツァルトのピアノソナタの中でも傑作とされる。交響曲の短調作品、25番と40番のうち25番ニ短調を思い起こす曲調だ。重苦しさよりは、決然とした強い意志のようなモチーフが展開される。第2楽章は一転して穏やかな親しみに満ちているが、時折り不安さを覗かせる和音が鳴り響く。
アファナシエフの演奏は他の録音同様、曖昧さのない明確な表現意図がクリアな音と共に再現される。重々しい和音にはときに大きな休止を伴い、まるで呼吸が止まるかのように感じる。そして次の瞬間、また新たな生命が生まれるがごとく一音一音、音を刻んでいく。その音に耳をそばだてていると、聴く側の心の内までもその音でえぐられるような心持ちになる。


この盤の音源。ハ短調ソナタの第3楽章。



アリシア・デ・ラローチャ(1923-2009)による演奏。幻想曲とソナタをセットで演奏しているもの。YouTubeのコメント欄にはラローチャの他のモーツァルト演奏へのリンクが記されている。ラローチャはスペイン物ばかりでなく、独墺系の古典からロマン派までの演奏も素晴らしい。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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