川畠成道<美しき夕暮れ>



週明け月曜日。仕事帰りにちょいと寄り道。8時少しまわった頃に帰宅した。関東の秋も深まりつつあり、あす朝の気温は10℃を下回る予報。さて、季節の変わり目、風邪など背負い込まぬように早寝が肝心だが、少し時間があるなと、寝酒代わりにヴァイオリンの小品集を取り出した。


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2007年春発売の川畠成道のアルバム。60年代にカラヤン&ベルリンフィル他、独グラモフォンの名録音の収録に度々使われたベルリン・イエスキリスト教会で録音された。だいぶ前に一度記事にしているので再掲しておく。滅多にレギュラープライスの新譜や話題の盤を手にすることはないのだが、この盤は数年前たまたま駅前の大手スーパー閉店セールで半額の赤札が付いて、他のいくつかの盤と一緒にレジに持っていった。。収録曲は以下の通り。ヨーロッパの中心から少し離れたスラヴやジプシー由来の音楽、フランス近代や映画音楽など、中々考えられた小品集。

•美しき夕暮れ(ドビュッシー)
•ユモレスク(ドヴォルザーク)
•ルーマニア民族舞曲(バルトーク)
  棒踊り/腰帯踊り/足踏み踊り/角笛踊り/ルーマニア風ポルカ/速い踊り
•剣の舞(ハチャトゥリアン)
•熊蜂の飛行(リムスキー=コルサコフ)
•ニーグン(ブロッホ)
•白鳥(サン=サーンス)
•スペイン風セレナーデ(シャミナード)
•ギターレ(モシュコフスキー)
•ツィガーヌ(ラヴェル)
•ハンガリー舞曲NO.7(ブラームス)
•ただ憧れを知る者のみが(チャイコフスキー)
•アヴェ・マリア(カッチーニ)
•ひばり(デニィーク)
•ひまわり(マンシーニ)

雑誌を眺めながらオーディオのボリュームを少し絞り気味にしてプレイヤーのスタートボタンを押すと、アルバムタイトルになっているドビュッシーの<美しき夕暮れ>が、ハッと耳をひく音色で流れてきた。録音の調整具合もあるのだろうが、ぼくのセットで聴く限り、丸みを帯びた、やや鼻が詰まったような懐かしくも美しい音色だ。ドビュッシーのこの曲に実に相応しく、思わず雑誌から目を離し、しばしスピーカーに耳を寄せて聴き入ってしまった。20曲に及ぶ収録曲。技巧的な曲と豊かな歌にあふれる曲と入り混じっているが違和感は感じない。全体を不思議な静寂と抑制が支配しているように感じる。バルトークのルーマニア民族舞曲では力強いボウイングで民族的な雰囲気をよく出しているが、決して荒っぽく叫んではいない。シャミナードのスペイン風セレナードとモシュコフスキーのギターレなどは軽やかかつ穏やかな仕上がりだ。

こうしたポピュラー小品は弾き手のセンスがそのまま出る。キャッチーなメロディーにあふれる小品群は安易に弾いてもそれなりに聴き手を楽しませるが、少し身を入れて聴くとそうした演奏はすぐに馬脚をのぞかせ、およそ鑑賞に耐えない。この盤ではそうした危惧は皆無だが、惜しむらくは伴奏を付けているロデリック・チャドウィックのピアノが録音バランスのためか、少々デリカシーに欠けるときがある。もう少し控え目であってほしかった。川畠成道のヴァイオリンはどの曲にも真剣、真面目、誠実に取り組んでいる様子が独自の美しい音色を通して伝わってくる。夕映えを面に受けたジャケット写真の印象そのままの、自然で心にしみるアルバムだ。


フォーレ<夢のあとに> 歌曲版、チェロ版、それぞれにいいが、控えめなヴァイオリンで奏するとこの曲のはかなさがよく出るに思う。


2012年9月の演奏。横浜で活動する音大OGオケの演奏会。
モーツァルトのVn協奏曲第5番から第1楽章。




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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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