アラジンとチャイコフスキー



朝晩の気温は10℃前後になり、通勤途中に見る街路樹のプラタナスがだいぶ色付いてきた。銀杏はもう少ししてからだろうか。今朝はこの秋一番の冷え込みで、行き交う通勤族もにわかに冬の装いだ。週半ばの水曜日。8時少し前に帰宅。あすは休日。ひと息ついて、少し早いかなと思ったが、この秋はじめてアラジンストーブに灯を入れた。写真のアラジンストーブは2004年に買ったから、ちょうど干支ひとまわりしたことになる。これまで何度か芯交換をしたが、隣り町にアラジンストーブを専門にメンテナンスする店をみつけ、十年余たったこともあって、はじめてメンテナンスに出してみた。これといった不具合なく、きれいに使っていますねとの主のコメントと共に青い炎がいっそうきれいになって戻ってきた。


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ぼくが小学生だった頃(東京オリンピックが小学校4年のときだった)、時折りお邪魔していた隣家の居間に、このアラジンストーブが置いてあった。青い炎とアラジンという名前はそのときに覚えた。当時はまだ英国からの高価な輸入品であったアラジンを使っていた位だから、随分とハイカラな家だったのだろう。その後アラジンストーブは暮らしの手帖で取り上げられて一気にブレイクしたが、やがて身売りを繰り返し、しかし日本では根強い人気もあって、現在は日本の某メーカーが生産を継続している。秋口になるとホームセンターに石油ストーブやファンヒータが並ぶが、どれも無粋なデザインばかりだ。このアラジンはそういう製品と比較すると少々値は張るが、どんな部屋に置いてもサマになる。値が張るといっても桁が違うわけでもない。10年、20年と芯交換を続けて愛用できることを考えると悪くない買い物だ。メンテナンスを依頼した店主いわく、アラジンストーブは構造がシンプルであるがゆえに、半世紀前であろうと確実にメンテナンスできるという。 冷え込む秋の晩はアラジンに灯を点け、チャイコフスキーの交響曲を絞り気味のボリュームで聴く。ストーブの上にホーローのポットをのせる。コトコトと湯の沸く音と、レコードの針音がシンクロする。…と、相当にキザな光景だが、このストーブ一つでそんな気分になる。


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音楽とその地域性と風土、季節性を強く感じる音楽とそうではない音楽とがある。例えばぼくの場合、チャイコフスキーやシベリウスを聴くのは圧倒的に冬の期間が多い。あるいはブラームス4番冒頭の弦の主題を聴くと秋の深まりを感じる。そしてチャイコフスキーの4番第1楽章冒頭のファンファーレを聴くと、ああ冬が来たなあと思うのだ。第4番は高校生の時分、クラシックをぼちぼち聴き始めた頃からの付き合い。写真の盤は70年代初頭にグラモフォンの廉価盤レーベル;ヘリオドールのシリーズで出ていた盤。ぼくの世代にファンには懐かしいジャケットデザインだろう。1960年にロリン・マゼール(1930-2014)がベルリンフィルを振ったチャイコフスキーの第4交響曲。これはマゼールのベルリンフィルへのデビューであったと何かで読んだ。この盤では若き天才マゼールが速めのテンポで颯爽と曲を進める。そしてそれに応えるベルリンフィルが素晴らしいサウンドを展開する。この盤のベルリンフィルはともかくべらぼうに巧い。押し出しのいい金管のファンファーレ、一糸乱れぬ弦のアンサンブル、そして全体を支配するややほの暗い音色。カラヤンに飼いならされる前の、かつてのベルリンフィルの響きが残っているのだ。 この盤を買ったのはぼくが高校3年のときだ。受験が終わったら思い切り聴いてやるぞと思いながら、アラジンではない国産のときどきススの出る調子の悪いストーブで暖を取りながら机に向かっていたのを思い出す。あれから40年余。受験もとうの昔に終わり記憶の彼方だ。受験だけでなく、いろんなことが始まり、そして終わった。この盤だけが当時の思い出そのままに、何も変わらずに懐かしい針音を聴かせてくれる。


この盤を同じLP音源。かすかにサーフェイスノイズが聴こえる。


小林研一郎が振る洗足学園音大オケによる演奏。



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No title

こんにちは

今日はアンプとアラジンに灯を入れたんですね、LP鑑賞には音の出ない暖房器具が必須でが、うちは電熱ヒーターを出しました。

普通の灯油ストーブの火はオレンジなのに、アラジンは温度の高い青です、仕組みが違うんでしょうか。

Re: No title

michaelさん、こんばんは。

部屋の空気を汚さないという点では電熱暖房がグーですが、いかんせん得られる熱量が少なく、当地北関東の寒さには不足。ヒートポンプで熱量を稼げるエアコンか石油燃焼の出番ですね。 アラジンのブルフレームは高温完全燃焼の証しですが、赤々と見える他のストーブも燃焼炎そのものはブルーで、赤外線による輻射熱を得るためのガラス筒や上部の網が赤熱する構造のものも多いようです。ですから見た目は赤々。それはそれで暖か味があっていいと思いますね。

プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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