諏訪内晶子 バッハ:ヴァイオリン協奏曲集


朝のうち降っていた雨があがったあと、妙に暖かな一日。先週の降雪がうそのようだ。
師走十二月。早いもので今年も残すところひと月になった。 ほぼ定時に退勤、帰宅。風呂につかり、夕飯を食べ、ひと息つく。昨夜はフルヴェンで年甲斐もなく少々語り過ぎたなあと恥じ入りつつ、今夜はこんな盤を取り出した。


201612_Suwanai_Bach.jpg  201612_Bach_Concert_for_Two_Violin.jpg


諏訪内晶子の弾き振りによるバッハ;ヴァイオリン協奏曲集。2006年録音。ヴァイオリン協奏曲第1番と第2番、二台ヴァイオリンのための協奏曲、そしてヴァイオリンとオーボエのための協奏曲。いずれもバッハ器楽曲中の名作。取り分け二台ヴァイオリンのための協奏曲はお気に入り最上位に位置する曲だ。だいぶ以前に一度記事にしているので再掲しておく。

ピアノやヴァイオリンの<弾き振り>はバロックから古典期までの曲ではよくあるスタイルだ。とはいえこのバッハの曲で独奏パートが休みの間、終始オケを実際に指揮しているわけではなく、曲作りを彼女が主導し、具体的な指示や演奏時のアインザッツを彼女が行なっているということだろう。従ってこの演奏は独奏部分とオケ部分合せて曲全体として諏訪内流に仕上がっているものと思う。オーケストラは80年代初頭に当時の若手腕利きを集めて指揮者アバドによって設立されたヨーロッパ室内管弦楽団が受けもっている。

いずれの曲も一聴して極めて流麗で颯爽とした演奏だ。独奏者もオケもモダン楽器を使いながらも、多分にピリオド奏法に近い弾き方をとっている。ヴィブラートはほとんどかけず、音の立ち上がりに際しては深いアクセントはおかずに速いボウイングで音をスッと立ち上げ、また音価も短めにとって、スッと終わらせている。その結果生じる音符と音符の間を埋め合わせるようテンポは速めになる。深いアインザッツと共に音価いっぱいにテヌートを効かせるロマン派後期から20世紀前半に主流だった奏法とは対極だ。
では清涼飲料水のようなさらりとした演奏かというと、これがそうでもない。この演奏では諏訪内の指示とオケの性格とが相まって、独奏・オケ部とも各声部の動きが実に闊達だ。ほんの2小節程度のフレーズであっても、その中でのディナーミクを大きく変化させているし、各声部の絡み合いもそれぞれが積極的に仕掛けていて緊張感を高めている。特にチェロ・コントラバスの低弦群が実に表情豊かで、曲全体が生き生きと躍動している。このあたりはチェロやコントラバスの基音までしっかり再生されないと印象が異なってくるだろう。オーディオ装置は音楽を聴く単なる手段ではあるが、その再生能力次第で演奏者の意図がきちんと分かるかどうかのサンプルのような演奏であり録音だ。この盤では低音域の処理が上手く行なわれているためか、そう大掛かりな装置でなくてもまずまずの音で楽しめる。しばらく前からの愛器アヴァロンで聴くと、低弦群の表情、ヴァイオリンのボウイングのニュアンス、演奏者の息遣い、音楽を楽しみ理解するために必要な情報が漏らさず、デフォルメせずに再現される。

バッハのヴァイオリン協奏曲はいずれも素晴らしい。対位法を駆使してモチーフが各声部で絡み合う様、ホ長調の第2番を除き短調を取ったことによる深い情緒表現など、何度聴いても飽きない名曲だ。


元祖ドッペルともいうべき名曲二台ヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1043。シュタインバッハーと諏訪内晶子。通奏低音にコントラバスが入っていないのでやや軽めの響きだ。


この盤の音源で同第3楽章。こちらはコントラバス入りの通奏低音で奏されている。ヘッドフォンで聴くと低音パートが実に闊達に歌っているのがよくわかる。


サンクトペテルブルグ音楽院の室内オーケストラによる二台ヴァイオリンのための協奏曲;第1・2楽章。音楽は少々前のめりだが、生き生きとした演奏。 それよりなにより…美人揃い(^^



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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