ブラームス <弦五第二>



昨日までの寒気が抜けて冷え込みのなく穏やかな一日だった。とはいえ、あすにはこの冬一番の寒波再来との予報。これからしばらくがまさに寒中。二月初旬までが寒さのピークだ。さて業務少々ひっ迫し、ちょいと居残り。8時半過ぎに帰宅。ひと息ついて、今夜は久しぶりに渋めの曲を聴こうかと、こんな盤を取り出した。


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ブラームスの弦楽五重奏曲第二番ト長調作品111。ベルリンフィルメンバーによる1970年の録音。弦楽五重奏の一番と二番がそれぞれA面B面に収められている。手持ちの盤は1979年に<室内楽1300>と称されたフィリップス系廉価盤シリーズ中の一枚(この盤についてはだいぶ以前に一度記事にしているので再掲しておく)。演奏団体名はベルリン八重奏団としてクレジットされて、その中の以下のメンバーが参加している。土屋氏は1959年から2001年まで当時BPO唯一の日本人プレイヤーとして在籍。この録音は入団から10年を経った頃のもので、名実共に名門オケのヴィオラ奏者として活躍していた時期の記録となる。

 アルフレッド・マレチェック(Vn)
 フェルディナンド・メツガー(Vn)
 土屋邦雄(Va)
 ディートリッヒ・ゲルハルト(Va)
 ペーター・シュタイナー(Vc)

ブラームスの五重奏ではクラリネット五重奏曲、ピアノ五重奏曲がまっさきに頭に浮かぶが、管もピアノもない弦楽五重奏曲、取り分けこの第二番もいかにもブラームスらしい渋さに満ちている。加えて、この曲には渋さゆえの難解さがない。全楽章とも穏やかな歌謡性を持ち、親しみ易い。ベートーベン最晩年の室内楽やピアノソナタが、深く瞑想的かつ常人を受け付けないようなところがあるのとは対照的だ。ぼく自身はブラームスの室内楽中、もっとも素晴らしいものの一つと感じる。

第1楽章、冒頭こそ明るいト長調で始まるが、決して陽光さんさんと降り注ぐ明るさではない。穏やかで平和的ながら、ほの暗い落ち着きも併せ持って曲が進む。2本のヴィオラによる響きは中音部が厚く、それでいて同じブラームスのチェロを2本にした弦楽六重奏ほどの重さはなく、程よく重厚で温厚に響く。
第2楽章と第3楽章はそれぞれニ短調、ト短調の短調に転じる。第2楽章はヴィオラの哀愁に満ちた主題で始まり、ヴァイオリンによって変奏されていく。最後に主題が回想され、長調に転じて終止するあたりは本当に美しい。続く第3楽章のレントラー風のメロディーも一度聴いたら忘れないほど印象的なものだ。哀愁に満ちた旋律を各パートが綾を成すように展開される。終楽章はブラームス得意のハンガリー風(ロマ風)のモチーフで始まる。途中、穏やかな副主題をはさみながらも、最後はラプソディックに盛り上がり曲を終える。

ベルリンフィルメンバーによる演奏は、昨今の、よりダイナミックかつアクティブな演奏スタイルに比べるとずっと内省的。1970年というと、ベルリンフィルはカラヤン施政下ですっかり近代的なオケになっていたと思うが、こうして室内楽と聴くと、個々の演奏者のベースにはまだまだひと昔前のスタイルが残っていたのかと実感する。


以下の動画は2013年ヘルシンキ室内楽フェスティバルでの録音とのこと。セルシェル(G)とデュオのアルバムも出しているジャン・ワンがチェロを弾いている。少しググッてみると他のメンバーもみな素晴らしキャリアの持ち主。モダンかつシャープな演奏。当然だが、BPOメンバーによる45年前の演奏とは印象がまったく異なる。
第2楽章12:12~ 第3楽章 18:12~ 第4楽章23:30~


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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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