クルト・ザンデルリンクのベートーヴェン
五時過ぎに仕事を終えて外へ出ると意外に空が明るい。そうか、日脚が伸びたのか…冬至からひと月以上経ったのだから当たり前だなあと、少し気が早いが春の予感を抱きながら家路についた。 さて、ひと息ついて今夜はベートーヴェン。しばらく前からちょこちょこ聴いていたこの盤を取り出した。


最後の巨匠ともいわれたクルト・ザンデルリンク(1912-2011)がフィルハーモニア管弦楽団を振ったベートーヴェンの交響曲全集。1981年のデジタル録音。手持ちの盤は20世紀が終わる頃、激安ボックスセットで出たときのもの。80年代初頭の録音ということだから、当初のリリースはLPであったはずだが、話題になった記憶がない。全曲が録音されていながら、LP時代のリリースは一部にとどまったようで、このCDセットで初めて全容が明らかになったといっていいだろう。手持ちのDiskyCommunication版ボックスセットは、Disk-1に入っている第1番が第3楽章までで終わり、第4楽章はDisk-5へ飛ぶという、廉価ボックスとはいえ少々難有りの編集がいただけないが、その後再発されたセットは6枚組みになり楽章割付も正常化、加えて同時期に録音された序曲類も入って、まともなセットになった。
ザンデルリンク68歳の円熟期の録音。音楽は悠々と流れる。音価いっぱいに引き伸ばされるレガートなフレージング、柔らかなアインザッツ。ベートーヴェンの交響曲がもつ熱く劇的なイメージは少ない。こう書くと腑抜けのベートーヴェンと受け取られかねないが、そんなことはない。腕利きが揃うフィルハーモニア管の追従もよく、ゆっくり、ゆったりでありながらアンサンブルの縦の線はきちんと揃い、音楽全体は整然と進行する。90年代以降の新世代の演奏と比べるとオールドファッションの感は否めないが、今となっては貴重なスタイルだ。内田光子がベートーヴェンの協奏曲の録音に際し、「ザンデルリングとでなければベートーヴェン録音はありえない」とザンデルリンクとの協演を希望して録音が実現したという。ザンデルリックというと70年代初頭のシュターツカペレ・ドレスデンとのブラームスがまず思い出されるが、ブラームスでみせる男性的な表情とはまた違った色合いのベートーヴェンだ。
この盤の音源。第2番の第1楽章
内田光子がザンデルリンクと組んだベートーヴェンの協奏曲。第5番の第2楽章。1998年ザンデルリンク86歳。
ザンデルリンクのドキュメンタリ。…う~ん、ドイツ語わからん!
★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■

にほんブログ村
- 関連記事
-
- セルのブルックナー第8 (2017/02/19)
- トーマス・ザンデルリンクのブラームス (2017/01/28)
- クルト・ザンデルリンクのベートーヴェン (2017/01/26)
- クリュイタンス&BPO ベートーヴェン交響曲第2番ニ長調 (2016/11/24)
- ベーム&BPO シューベルト交響曲ハ長調<ザ・グレート> (2016/11/23)