BRAVO!下野竜也 群馬交響楽団第525回定期演奏会
週末祝日の土曜日。昼過ぎに隣り町のマンドリンアンサンブルの練習。終了後、先月に続き群馬交響楽団(群響=グンキョウ)の演奏会へ。真冬に逆戻りのような凍てつく夜にもかかわらず、群馬音楽センターの1900席はいつも通り9割方の入りで盛況だ。

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ドヴォルジャーク/序曲<フス教徒> 作品67 B.132
ドヴォルジャーク/ピアノ協奏曲 ト短調 作品33 B.63
―休憩―
ドヴォルジャーク/交響曲 第6番 ニ長調 作品60 B.112
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ピアノ:清水和音
指揮:下野竜也 管弦楽:群馬交響楽団
2017年2月11日(土)18:45~ 群馬音楽センター
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今回はオール・ドヴォルザーク、しかも滅多に聴く機会のない曲を含め、中々レアなプログラム。特に序曲<フス教徒>はほとんど演奏されないし、ピアノ協奏曲も演奏機会はごく少ないと、プレトークでの渡辺和彦氏談。手持ちの盤をあたってみたが、どちらも見当たらなかった。しかし実際に聴いてみると、共にもっと取り上げられてもおかしくない内容だ。序曲<フス教徒>はハ短調で開始されるものの、最後にハ長調に転じてフルオケの響きを堪能できる。ピアノ協奏曲は第1楽章、第2楽章とも、冒頭から魅力的なフレーズで引きつけられる。決してピアニストの技巧をみせる曲ではなく、オケパートが常に雄弁に語るように書かれているあたりは、ブラームスのピアノ協奏曲を思わせるほどだ。しかし、そうした曲のあれこれよりも、当夜の最大の収穫は下野竜也氏の指揮だった。
巷間下野氏が注目されるようになってから、もう十年以上になるだろうか。2001年のブザンソンで優勝し、ナクソスから邦人作品でデビューした。以降あちこちのオケと協演し、その度に高い評価を受けていた。過去群響にも客演したことがあったのだが、ほくは今回初めて彼の指揮に接した。そしてブラーヴォ!評判通りの素晴らしい指揮者だ。
まずアンサンブルの切れがいい。指揮棒と左手を使い、ときに大きな身振りの交えて指揮ぶりだが、その動き自体がシャープかつ無駄なところがない。必要のないところでは大振りしないし、トゥッティの決めどころでは、指揮棒は大きく右から左にまるで空気を切り裂くように振られる。そしてアーティキュレーションの指示も抜かりない。短いフレーズの中でもふくらみのある表現をするところでは、それまでの1小節4つ振りを瞬時に2つ振りにして、指揮棒が大きく弧を書くようにレガートな曲線を描く。指揮棒を見ているだけで、どういう表現を求めているかが一目瞭然だ。
さらに賞賛に値するのは完璧なパートバランスだ。群響の本拠地、群馬音楽センターの音響はきわめてデッドで、オケの芳醇な響きを楽しむには残響時間がまったく足らない。同時に直接音主体の響きなるので、特にホルンパートなどは時に突出し、かつ乾いた響きになることが多々あった。しかし当夜の演奏では、ホルンも木管群もきわめて自然な響きとバランスを保ち、耳障りでアンバランスな響きを出すことがなかった。これはひとえに下野氏のバランス感覚と、それを的確にオケのメンバーの指示したからに他ならないだろう。そうしたコントロールがゆえに、必要なところでのトゥッティの迫力も申し分ない。きちんとしたバランスと、正確なアンサンブルとアーティキュレーションを徹底すれば、ホールアコースティックに頼ることなく、説得力のある音楽ができることの証明だった。そしてもちろん、そうした結果に至るまでの課程における下野氏のスコアリーディングの深さがどれほどか、当夜一聴しただけでも分かるほどだ。実際、会場のほどんと人が初めて聴いたであろう序曲<フス教徒>でも、最後の和音がなり終わったあと、メインプログラムかと思わせるほどの拍手が沸き起こって驚いた。それだけの説得力ある表現だった証しだろう。
すでに読響正指揮者としてドヴォルザーク交響曲全曲演奏に取り組み、自信と自負をもって臨んだであろう当夜のオール・ドヴォルザークプログラム。ようやく実演に出会えた下野氏にブラーヴォ!そしてその指示に十二分に応えた群響団員にもブラーヴォ!を贈りたい。
ケルテス指揮ロンドン響による序曲<フス教徒>の音源。
★★追伸★★
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