中出ギター在庫確認



少し前の話になるが、昨年末から今年始めにかけて、中出敏彦ギターの都内販売店在庫をほぼ全数確認してきた。前後して中出氏とも数年ぶりに電話で話をし、近況を伺った。日本におけるギター製作草分け中出阪蔵氏の次男中出敏彦氏は1932年生まれ。国内の製作家の中での最長老の一人だ。ちなみに兄の輝明氏は数年前80歳になったのを期に完全引退した。


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今回試奏したのは全部で4本。音はいずれも良好。30年ほど所有していた1983年製の同氏の楽器と比べるとずっと男性的でパワフル。以前に比べ低音もよく出るようになっている。かつては120号、160号、200号という価格設定をし、実際には大幅値引きという二重価格のような状態だったが、現在は正常化?して40号・50号(横裏板インドローズ)、60号・80号・100号(ハカランダ)というラインナップ。ただし100号はほぼ特注品としてヘッドの装飾等と入れたもので、実質的には80号が最上位モデル。また豊富な材料在庫もすでに<良材しか>残っていない様子で60号で十分良質な印象だ。高い値付けで売れないよりは、60号でたくさん売れる方を選択し、手持ちの材料を使い切ってより多くのギターを作り、世に出したいという意向のようだ。試奏した4本の印象は以下の通り。

(1) 60号 松・ハカランダ 650mm 都内某A店
横裏のハカランダ材はいかにも真性ハカランダという感じの漆黒の板目良材。サウンドホールから除くとセンター両脇にも裏打ちの板があることから、裏板は4ピース構成と思われる。セラック塗装の仕上げはほどほどの鏡面状態。音質良好。低音も力があり、高音も明るく鳴る。以前所有したいた同氏の楽器と比べると、ずっと男性的。弦の張りはやや強く感じる。

(2) 60号 松・ハカランダ 650mm 都内某B店
横裏のハカランダ材はやや明るい茶色ながら柾目の良材。こちらの裏板は2ピースのブックマッチ。表板、横裏板とも、セラック塗装はきれいな仕上がり。音は今回確認した中では一番良かった。低音もしっかり出ているし、高音も艶やかに伸びて良好。

(3) 60号 松・ハカランダ 650mm 都内某C店
(4) 60号 松・ハカランダ 640mm 都内某C店
2本とも横裏ハカランダは某A店同様の漆黒の板目真性ハカランダ材。セラック仕上げも某A店在庫品と同レベル。640mmの(4)はボディーもやや小ぶり。ネックもやや細め(50.5mm)で弾きやすい。音は明るく鳴り、手元の音量感は650mmよりある感じ。少し離れて聴くと(3)650mmの方がエネルギー大。音は某A店とほぼ同じ感じで良好。ただ、低音がやや弱い印象だったが、同日・同条件の比較でないので確かではない。

…と、ざっとこんな感じだ。調査時点からすでに2ヶ月ほど経過しているので、現時点での在庫状況は変化していると思われる。
敏彦氏というと、必ずエルナンデス・イ・アグアドのもとで学びと紹介されるが、同工房にいたのはごく短期間であってその工法をすべて学び、帰国後再現しているわけではない。実際、敏彦氏の作った楽器でアグアドと同じボディシェイプのものは見たことがないし、その音ももちろん違う。アグアドをトレースするなら他の楽器の方がいいとぼくは感じている。しかし、現代の若手製作家がうらやむような良材を使い、高い工作精度で堅実に作られた中出ギターの音が悪かろうはずはない。また幾多の改良を経て、70年代80年代の個体よりは2000年以降のものは確実に音がよく、特に低音が充実しているように感じる。

中出氏との電話やり取りでは、ギターを作っているときが一番体調がいい、休んでどこかへ出かける方が疲れる、あさ明るくなると起きて製作に取り掛かり、夕方暗くなる時間には終了とのこと。仕事の手も圧倒的に早く根っからの職人気質の敏彦氏。父親の阪蔵氏(1906-1993)が最晩年まで製作を続けていたこともあるし、敏彦氏は体型や風貌も父親によく似ていることから、まだまだ元気で製作を続けてくれることだろう。


父中出阪蔵氏についてはこちらを

かつてのNHK教育テレビ<ギターを弾こう>でのひとコマ。アントニオ古賀が講師をつとめた1983年当時の映像。敏彦氏の父中出阪蔵氏がゲスト出演した



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No title

お久しぶりです。中出敏彦特集、興味深く拝見しました。僕のは1979年作、master30です。
http://www.dolphin-gt.co.jp/stock/4066/
思えば40年近くのお付き合いです。もし機会があれば、札幌にもお世話になっているアマチュアがいるとお伝えください。

Re: No title

70年代後半の30号は当時の最上位モデルでしたから、横裏のハカランダも見事の材料ですね。そういえば、大阪江坂のドルフィンギターへも出張の折に、2度ほど伺ったことがありました。クラシック専門ではありませんが、ときどきよい楽器が入荷するようです。敏彦さんとは何度かお会いしています。最後にお会いしたのは15年ほど前、中野の自宅兼工房で。今回は電話を通してでしたが、壮年期を変わらない声でした。
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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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