アンセルメ&OSR ロシア管弦楽名曲集
陽射しはややにぶいものの20度超えの暖かな日が続く。関東地方の桜も今週末が見頃になりそうだ。
さて、本日もほどほどに業務にいそしみ、いつも通りの時刻に帰宅。ひと息ついて、先回のボロディンの記事で思い出し、こんな盤を取り出した。


アンセルメとスイスロマンド管弦楽団によるロシア管弦楽名曲集。1957年から1964年にかけての録音。手持ちの盤は90年代終わり頃、ミドルプライスで出たときのもの。いまさら解説するまでもないだろうが、エルネスト・アンセルメ( 1883-1969)は元数学者にして、のちフランス物やバレエ音楽を得意とする指揮者として活躍した。特にスイスの仏語圏(スイスロマンド)を代表するオーケストラであるスイスロマンド管弦楽団を振って英デッカに残した一連の録音はステレオ初期の名盤として人気を博した。収録曲は以下の通り。
1. 交響詩「はげ山の一夜」(ムソルグスキー-リムスキー=コルサコフ編)
2. 歌劇「サルタン皇帝の物語」~くまんばちは飛ぶ(リムスキー=コルサコフ)
3. 序曲「ロシアの復活祭」(リムスキー=コルサコフ)
4. 歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲(グリンカ)
5. 同「イーゴリ公」~ダッタン人の踊りと合唱(ボロディン-リムスキー=コルサコフ編)
6. 交響詩「中央アジアの高原にて」(ボロディン)
7. 歌劇「三つのオレンジへの恋」~行進曲とスケルツォ(プロコフィエフ)
久々にフルボリュームで聴いてみたが、60年代英デッカ黄金期を伝える実に鮮やかできらびやかな音質にあらためて驚いた。ゴージャスという言葉がぴったりだ。日本では東京オリンピック以降60年代後半から70年代にかけてステレオ装置が一般家庭にも普及し出したが、英デッカ録音は独グラモフォンの重厚さや米コロンビアのやや乾いた音質に比べ鮮烈に響いたに違いない。この盤もマイクロフォンを各パートごとに設置してそれぞれ楽器の音は明確にピックアップした上でミキシングするという、英デッカのマルチポイント録音の特徴がよく出た録音だ。コンサートホールで聴くオーケストラのバランスとは明らかに違うのだが、これはこれで再生音楽としての楽しみを堪能させてくれる。
「はげ山の一夜」で鳴るグランカッサの音は、音というよりは部屋の空気を静かに揺すぶるように響き、不気味な妖怪達のうごめきや周囲を吹き抜ける冷ややかな風をイメージさせる。但し、これ(コンサートホール聴くグランカッサの空気感に近いイメージ)を実感するには50Hz程度の低音域まで素直に出るオーディオシステムが必要だ。こういう録音を聴くと、演奏者の意図をきちんと理解するには相応のオーディオシステムが必要だと思ってしまう。ほどほどのシステムだと、どうしても耳につきやすいメロディーや中音域のハーモニーだけに神経がいきがちだ。
中学の音楽鑑賞で聴いて好きになった曲の一つである「中央アジアの平原にて」では木管群のエキゾチックなソロが冴え冴えと響き、砂漠の夜空にきらめく星の光のようだ。一方オーケストラのアンサンブル能力や推進力が必要な「ルスランとリュドミラ序曲」や「熊蜂の飛行」などはいささか手ぬるいし、規模が大きく曲の組立てがやや複雑な「ロシアの復活祭」などでは、弦のアンサンブルや木管の音程なども万全とはいえない。スイスロマンド管弦楽団の持ち味として、そうしたオケの機能性はあまり期待できず、もちろんムラヴィンスキー&レニングラードフィルの演奏などとは比べるべくもない。実際こうしたオケと録音の特徴から60年代後半にこのコンビが来日して際、実演に接したファンの評価は必ずしもよくなかったという。鮮烈な録音に慣れた耳で実演にも同じ音を期待した結果だ。この盤は60年代の完成されたステレオ録音の素晴らしさと大らかでゴージャスなオーケストラサウンドを、あまり細かいことを言わずに楽しむ盤だろう。
アンセルメが1969年に亡くなったあとスイスロマンド管弦楽団は長らく低迷。一方英デッカは80年代のデジタル録音時代を迎えてフランス物・ロシア物の色彩的な管弦楽曲の再録音を迫られ、アンセルメと同じくスイス生まれのフランス系指揮者シャルル・デュトアと手兵;モントリオール交響楽団のコンビに白羽の矢を立てて録り直すことになる。
さて、あすは週末金曜日。もう一日頑張りましょか…あ~んど、あすの夜にはいよいよ<孤独のグルメ Season6>がスタート。心身準備怠りなく整え、夜食テロに備えよう!
この盤の音源。ボロディン<中央アジアの平原にて>
ボロディン:歌劇<イーゴリ公>~ダッタン人の踊りと合唱
歌劇<イーゴリ公>~ダッタン人の踊り…実際のステージはこんな感じですね。
★★追伸★★
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