イリーナ・クリコヴァ(G)



一週間前に放送されたセゴビア@Eテレ。ご覧になった輩も多いかと思うが、番組の主題以外でぼくが気付いた点は以下の通り。

◇二人のゲストが抱えていた楽器は…
村治佳織:ロマニリョス/トルナボス付き
手塚健司:ドミンゴ・エステソ

◇セゴビア1959年来日時に羽田空港で花束歓迎を受けたとき…
セゴビアの後ろでギターケースを持っていたのは小原安正。

◇弦長650mmと665mmの比較…
650はラミレス1世、665はラミレス3世。 村治佳織がラミレス1世を手にしたとき、(オフレコで聞こえなかった)つぶやいた言葉は…「軽~い!」(多分)

…そんな番組の余韻もあって、今夜はこんな盤を取り出した。


201707_Kurikova2.jpeg 201707_Kurikova.jpg


これまで何度か記事に取り上げているイリーナ・クリコヴァのギター。ナクソスから出ている彼女の3枚のアルバム中の一枚。確かこの盤が一番最初にリリースされたはずだ。収録曲は以下の通り。20世紀になってから書かれた充実した近代作品がたっぷり楽しめる。

 ・ポンセ/ソナタ第3番(1927)
 ・タンスマン/スクリャービンの主題による変奏曲(1972)
 ・ポンセ/子午線のソナチネ(1930)
 ・ブローウェル/ジャンゴ・ラインハルトの主題による変奏曲(1984)
 ・ホセ/ソナタ(1933)

まずは本格的な近代作品を並べた姿勢に感服する。ポンセやタンスマンは、少し音楽的感度の高いギター弾きに取っては、好きな作曲家の双璧ではないだろうか。実際この盤に収録されているポンセの2曲とタンスマンの曲だけでもこの盤の価値がある。クリコヴァの演奏はいずれの曲も完璧な技巧とよく練られた解釈で、これらの作品が持つ和声の面白さや構成や展開の妙が存分に楽しめる。

名曲ポンセのソナタ3番はセゴビアの演奏もこの曲のオリジンとして素晴らしい。セゴビアで聴くとその音色もあって何かノスタルジックなイメージが沸いてくるが、この盤で聴くとより新しい音楽を聴いているような気分になる。録音の状態や音の録り方も曲が与えるイメージに随分と影響する。
タンスマンの変奏曲はスクリャービンに目を付けた時点ですでに賞賛したいくらいだ。濃厚な19世紀的ロマンティシズムを、タンスマンはギターにうまくのせ、美しい響きと造詣に仕立て上げている。ブローウェルの作品はその曲名からイメージするほどジャズ的でもジャンゴ的でもなく、ブローウェルらしい前衛的要素も強く打ち出していて、安直な楽曲に終わらせていない。アントニオ・ホセのソナタは、34歳で夭折したホセの代表作でありながら80年代になって知られるようになった曲のようで、実のところ70年代終わりで一旦ギター生活を休止し、21世になって復帰したぼくなどには、タンスマンの変奏曲(1972年作)やブローウェルの変奏曲(1984年作)と同様、この盤で初めてまともに聴いた次第だ。

クリコヴァはチェリストであった母親から音楽の手ほどきを受けたことも影響してか、単音のメロディーの歌い方がインスピレーションに満ちている。加えて愛器;サイモン・マーティーから繰り出される音は広いダイナミクスと浸透力がある。トータルとして現代的なギター演奏の典型であり、一つの頂点ではないかと感じる。YOUTUBEには相当数の彼女の演奏があるが、いずれも音質に問題が多い。オリジナルのCDを聴くことを薦めたい。お手軽、便利なYOUTUBEではあるが、それですべてを間に合わせるのは、演奏の本来の姿を見落としかねない。


ポンセ「南のソナチネ」。ナクソス盤録音セッション時のものと思われるが、CDの演奏とは微妙に異なる。CDに収録されたテイクの方が丁寧に弾かれていて音色も美しい。


タンスマンのスクリャービンの主題による変奏曲。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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