クレンペラーの<スコッチ>
朝のうち少し雨がぱらついたが、大きく崩れることなく穏やかな一日。帰宅後ひと息ついて、いつもの夜。すっかり寝入っているパピーを横目に見ながらダイニングテーブルでPCに向かいつつ安直ヘッドフォンリスニング。今夜は久々にこんな盤を取り出した。

メンデルスゾーンの交響曲第3番イ短調<スコットランド>。この曲の名盤の一つとして名高いクレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団による演奏。1960年録音。手持ちの盤は90年代中庸に第4番<イタリア>とのカップリングでリリースされた盤。当時東芝EMIが進めていたHS2008マスタリングによるもの。このHS2008マスタリングはあまり評判がよくなく、その後ほどなく本国仕様ともいうべきART(Abbey_Road_Technology)マスタリングに取って代わられた。
第1楽章冒頭から期待した通りのほの暗く憂愁に満ちた序奏が始まる。ボリュームを少し上げると60年代初頭優秀なプレイヤーを擁したフィルハーモニア管の豊かな響きが部屋いっぱいに広がる。クレンペラーの指揮はいつも通りのゆったりとしたテンポ設定と息の長いフレージングでじっくりと歩みを進める。この序奏を聴くだけでも価値ある曲だ。
第2楽章はヴィヴァーチェの速度指定を無視するかのようにゆったりとしたテンポ設定だが、付点音符の扱いやアーティキュレーションが適切でリズムの歯切れはすこぶるよく、音楽は遅滞せずしかもスケール豊かに進む。第3楽章のアダージョは第2楽章と反対に冒頭やや速めかなと感じるテンポで始まる。ここでは初期ロマン派としてのメンデルスゾーンの豊かな歌がたっぷりと歌われる。横に美しく流れるメロディーと時折縦に切り込む短調の経過句の対比が素晴らしい。クレンペラーのオケ・コントロールは特に低弦群の扱いが秀逸だ。ゴリゴリとした不気味な強奏と広がりのある歌わせ方を実によく使い分けている。それにしてもこの第3楽章は何度聴いても美しく、いつまでも続いてほしいと思うほどだ。
第4楽章は古典派から初期ロマン派の交響曲の中にあって規模と充実感においてひときわ優れている。堂々としたソナタ形式で終始充実した管弦楽の響きを楽しめる。よく取りざたされるコーダの扱いもスタジオ録音のこの盤では通例通りA_durで締めくくられる。この盤のコーダがまたこれ以上はないという遅めのテンポ設定で圧倒的なスケール感だ。全曲あっという間の40分。クレンペラー&POの演奏はこの曲に期待する音楽的イメージをことごとく目の前に提示してくれて文句の付けようがない名演だ。
90年代に設立されたスペインの比較的新しいオーケストラ:ガリシア交響楽団による演奏。ガリシア交響楽団は村治佳織の2回目のアランフェスの録音(2007年)でバックを務めている。
この盤の音源。全4楽章。
★★追伸★★
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