グールドの<イギリス組曲>
寒波が去って三月並みの暖かな一日。春の気配にはまだまだ早いが、夕方の日脚はひと頃よりだいぶのびた。きょうも業務に精励。7時ちょうどに帰宅。ひと息ついて、相も変わらず音盤タイム。こんな盤を取り出した。

例のグールドのボックスセットから選んだバッハ;イギリス組曲。グールドのイギリス組曲はボックスセットを手に入れる前から通常リリース盤でよく聴いていた。グールドの盤歴の中では比較的遅い時期の録音で1977年に収録されている。ゴールドベルク変奏曲でデビューしてから二十年以上を経ているが、グールドのバッハに対するアプローチに大きな変化はない。すべてが明晰で、楽譜に書かれた音が解体され、そして再構築される。この盤はアナログ最終期ということもあって音も一層クリアで、彼の演奏の特質がよく明確に伝わってくる。しかしよく聴くと初期のパルティータの録音などに比べると、音楽表現の幅が少し控え目になっている。音の強弱、テンポ設定の緩急、アーティキュレションの扱い、そうした一つ一つを彼が頭に描いたイメージの一歩手前で指先をコントロールしているように感じる。
1932年生まれのグールドはこの盤の収録時には四十代半ば。いくらグールドの音楽が若くして完成されていたといえ、二十代の頃と違って当然だろう。これをして円熟というのかもしれないが、円熟がいいとも限らない。往々にして年齢を重ねるとテンポは遅くなり、音楽の味付けも濃くなる。グールドが50歳で亡くなる前、晩年のゴールドベルクの再録音でも分かるように、グールドもこの法則の例外ではなかった。若い頃の竹を割ったような演奏にリアリズムを感じることも多い。このイギリス組曲の録音は晩年のかなり大きな変化を前にした時期にあたり、壮年期の彼の比較的中庸な表現が聴ける盤だ。
第2番の音源。
第1番のブーレ。テープ編集風景。まさにアナログの世界。
◆全6曲の音源
https://youtu.be/UueQWNjv7_k
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