ソル:マルボロ―の主題による序奏と変奏



少し早く帰宅したこともあって、久々にギターを取り出し、こんな曲をさらった。


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フェルナンド・ソル(1778-1839)作曲<マルボロ―の主題による序奏と変奏>作品28。広げた楽譜は中野二郎監修ソル全集第4巻<変奏曲集>のもの。この第4巻には有名な作品9<魔笛の主題による変奏曲>他、ソルの作った変奏曲9曲が収められている。

いうまでもなくソルの活躍した19世紀前半は古典ギター黄金期といってよく、他のクラシック音楽同様、ギター曲でも変奏曲は重要な形式として多くの曲が残された。ソルの作品ではもっぱら<魔笛…>ばかりが取り上げられるが、ぼくは昔からこのマルボロ―…が好きで、学生時代からよく弾いて楽しんだものだ。<魔笛…>のような華やかな終わりをもたず、同じコーダながらしずかに幕を閉じるところが、コンサートプログラムとしては敬遠されるのかもしれない。

この曲でもソルの和声感は他の同時代のギター作品に比べ抜きんでている。序奏出だしのフレーズ…A-D-D-D-Ais-EのあとA-E-E-Eと続き、次のDis-Fisの二つの音を経てホ短調へ移る。ここが例えばカルリあたりでは、A-D-D-D-Ais-EそしてA-E-E-E-D-Fisと平凡なカデンツI-V,V-Iになってしまうところだ。続いて<マルボロ―は戦場に行った>という19世紀初頭から知られるフランス民謡の主題が奏でられる。ここではその親しみやすいメロディーが6弦をDに下げた効果を生かした持続低音にのって(パストラーレ風に)奏される。以降、5つの変奏が続くが、技術的にはソルの作品中では比較的弾きやすい。アルペジオにのせて低音がメロディーをとる華やかな第5変奏のあと、突然静まり返ってハーモニクスで主題が回顧され、最後は序奏でとられたとの同じ短調への移調が再び顔を出し、静かに曲を閉じる。

楽譜はこちら


多弦ギターを操るアンデシュ・ミオリンによる演奏。


元曲の民謡<マルボロ―は戦場に行った>
今でも歌い継がれているようだ。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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