昔は何をしていたんだろう  ベルリオーズ『幻想交響曲』

一日仕事を休んでグータラしていたら、頭痛もほぼ回復。きょうはいつも通りに片道37kmの道のりを愛車プリウス号を駆って出社した。PCやメールが職場に導入される以前、そう80年代までだろうか、その頃までは休みを取ったり、週末をはさんで出社しても、職場の机の上には格別の変化はなく、休む前の状態から仕事が再開された。PCやメールの導入後こうした風景は一変する。休み明けに出社すると、待っているのはその間に溜まったメールの山だ。

今朝も一昨日の晩から昨日の晩までに溜まった85通のメール処理から始まった。休み前と何も変わっていない状態が待っていると思うのと、何十通ものメールが待ち構えていると思うのとでは随分と気分が違う。PCやメールの普及で仕事がスイスイ片付くという宣伝は幻想だったのか。MS社のうそつき野郎!と怒鳴りたくもなるのだが、多分答えはこうだ。20年前の質と量の仕事をPCで処理すれば、あっという間に片付く。そこで終わりにすれば、うたい文句通りスイスイなのだ。ところが現実にはそうはいかない。別のパターンならどうなる、もう一つ試算してみようとか、せっかくだから写真入りの報告書にしておこうとか、そういう風に限りなく、一日の終わりが近づくまで仕事を増やしてしまっているのだ。MS社が悪いわけではない。20年前は毎日どんな風に仕事をしていたのか、今となっては当時の日常的な職場風景を思い出すことさえ出来ない。まさに幻想のかなただ。

…というわけで(長いマクラでスミマセン)、今夜はベルリオーズの幻想交響曲を聴こう。
手元にあるいくつかの盤、ミュンシュ指揮パリ管弦楽団、アバド指揮シカゴ交響楽団、カラヤン指揮ベルリンフィルハーモニー、モントゥー指揮北ドイツ放送交響楽団、クリュイタンス指揮フィルハーモニア管弦楽団などの中から選んだのはこの盤だ。アタウルファ・アルヘンタ指揮パリ音楽院管弦楽楽団の録音である。


アタウルファ・アルヘンタ指揮パリ音楽院管 幻想交響曲


写真や絵画には、一度見ただけで強烈な印象が残り、いつまでも忘れえないものがある。LPレコードのジャケットにもそういうものがあって、この盤などは正にそれではないか。この盤で指揮棒を取っているアルヘンタは、1913年にスペインに生まれ、1958年44歳の若さで夭折した。このジャケット写真はいつ頃のものだろう。30歳前後だろうか。スペイン生まれということから直感するラテン系の情熱と鋭い眼光、と思いつつよく見ると、その眼差しには優しさも見え隠れする。才能に恵まれ、若くして嘱望され、可能性に満ちた青年像とも見える。写真から想像して、さぞこの幻想交響曲を激しく熱っぽく演奏していることだろうと思いながら針を落とすと、その予想は見事にはずれる。パリコンセルバトワールのオケのアンサンブルはよく整い、精緻にこの曲を進めていくのだ。もちろん時折管楽器にみられるビブラートにフランスの香りを感じるし、第4・5楽章でも力不足はない。それでも決して熱血・激情に任せて弾き散らかした演奏ではない。英デッカの録音らしく各パートの音は明晰に分離し、残響音がやや少ないこともあって手に取るように動きが分かる。編集や録り直しも少なく、ほとんど一回勝負の録音ではなかったかと想像させる。さながらスタジオライブに居合わせているかのような印象と言えばよいか。過度に編集を重ね、リアリティのない、どこかの帝王の音作りとは対極だ。これからという時に世を去ったアルヘンタの他の録音も聴いてみたくなった。
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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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