ゼルキン&セルのモーツァルト
あたふたと週末終了。月もあらたまって明日からは今年の後半スタートという晩。音盤棚を眺めていたらこんな盤を見つけて取り出した。

ルドルフ・ゼルキン(1903-1991)の弾くモーツァルトのピアノ協奏曲。第20番ニ短調と19番ヘ長調のカップリング。バックはジョージ・セル指揮のコロンビア交響楽団。ここでセルが振るコロンビア交響楽団はワルターが晩年コンビを組んだコロンビア交響楽団ではなく、セルの手兵クリーヴランド管弦楽団そのもの。契約の関係で「クリーヴランド」の名前が使えなかったこと由。60年代初頭の録音。手持ちの盤は60年代の国内初出盤で、はっきりした記憶がないが、かつて出張の度に通った大阪梅田の名曲堂阪急東通店で手に入れたものだろう。
針を落としたモーツァルトの20番の協奏曲は、同じピアノ協奏曲の24番やいくつかの交響曲、室内楽などと同様、モーツァルトの数少ない短調作品で傑作の一つだろう。第1楽章の出だしから天真爛漫なモーツァルト像にはつながらない暗く暗示的な開始。セルの指揮するオケが例によって引き締まった響きで序奏を奏でる。ゼルキンのソロは意外なほど淡々とした調子で入ってきて、以降もベートーヴェン弾きの彼からは想像が付かないくらいのさらりとした弾きぶりだ。 第2楽章はロマンツァの指定があるものの、もちろんこのコンビは古典的様式感から逸脱することなく、しっかりした拍節感のあるインテンポを基本に進み、主題が戻るところでのみテンポルバートをかけている。それで十分にロマンツァになるようモーツァルトは書いているのだろう。第3楽章はゼルキンがやや速めのテンポでソロを始める。続くオケのトゥッティの緊張感あふれる響きが素晴らしくいい。さすがにセルと思わせるところだ。以降ももって回った表現は皆無で、ピアノ・オケ共に古典的様式と引き締まった音で最後まで緊張感を保って曲は進む。 こういう演奏に触れると、今どきの演奏は考え抜かれた解釈と表現、美しい音と万全の技巧には違いないのだが、どうもあざとさを感じてしまう。ごく普通に何かしようとせずに淡々と弾くこの演奏に好感をもつのだが、どうだろう。
この盤の音源。第20番ニ短調。ささやき程度ではあるが、小声でうなるゼルキンの声がしばしば聴こえてくる。
同第19番。
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