ショルティ&アシュケナージの<皇帝>
きょうになってあらためて今回の台風被害の大きさを知って驚く。幸い関東地方への影響は少なく、きょうは交通混乱もなし。いつも通りの出退勤となった。帰宅後ひと息つきながらネットを眺めていると、きょう9月5日は指揮者ゲオルグ・ショルティの忌日と知り、こんな盤を取り出した。

アシュケナージ(1937-)のピアノによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番変ホ長調<皇帝>。21年前1997年のきょう、84歳で亡くなったショルティ指揮のシカゴ交響楽団によるバック。1972年の録音。手持ちの盤は発売当時のもので、確か近所のリサイクルショップのジャンク箱から金百円也にて捕獲してきた記憶がある。
ゲオルグ・ショルティ(1912-1997)とシカゴ響は1977年の来日公演で実演に接した。大学4年のとき。学生バイトが一日2500円程の頃で、6000円のチケット代が一度に払えず、学生向けに設定された2回分割で支払った。ぼくら世代のクラシックファンならはっきりと記憶していると思うが、この頃、70年代半ばから80年代初頭のショルティ&シカゴ響の人気には絶大なものがあった。このコンビによる管弦楽曲の新譜は英デッカのドル箱路線と言ってよく、常にトップセールスを誇った。中でもベートーヴェンの交響曲全集とこのアシュケナージをソリストに迎えた協奏曲のレコードもそんな中の一つだった。
久々に聴いてみて、記憶の彼方にあるショルティ&シカゴ響による演奏のイメージと少々違っていて驚いた。記憶の中のこのコンビは、ともかくデカい音で鳴り、剛直かつ活気に満ち…というものだったが、こうしてこの盤を聴いてみると、生意気な言い方だが予想以上に<まとも>な演奏で、肩透かしをくった気分になった。
ショルティ&シカゴ響の音響は冒頭からよく整ったアンサンブルと明快に打ち込まれるアクセントが印象的であるが、決して力ずくという印象は受けない。全体のバランスも考慮されているし、ヴィオラやチェロによる内声部もよく聴こえてくる。テンポもほぼインテンポを基本にしていて恣意的なゆらぎはほとんど無い。加えて英デッカ録音の細部まで見通すような明瞭な録音ポリシーがこうした響きをよくとらえている。当時はまだピアニストとして全盛期にあったアシュケナージの音色も美しく、丁寧な弾きぶりだ。
そういえばその昔、FMから流れてくるブラームスの第3交響曲に、中々渋い演奏だが誰の指揮だろうと思いながら聴いていると、ショルティ&シカゴ響とのアナウンスがあって、我が耳を疑ったことがあった。評論家や雑誌からのインプットも重要な情報ではあるが、あまりそうした情報を前提とせずに、虚心に出てくる音楽に耳を傾けるべきだと学んだ。ショルティの名は当時の名声に比べ、昨今影が薄い感があるが、やはり一時代を画しただけのことはあると、納得の一枚である。
この盤の音源。全楽章。
ショルティの弾き振り。バレンボイム、シフと共にモーツァルトの3台ピアノのための協奏曲。ショルティはキャリアの最初をオペラハウスのコレペティトール(歌手のための練習ピアニスト)としてスタートした。国際コンクールでの優勝暦もあり、ピアノはお手の物だ。
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