ヤニグロ(Vc)愛奏曲集
先回の徳永兼一朗に続き、きょうもチェロの小品を聴く。取り出したのはこの盤。

何度か記事にしたアントニオ・ヤニグロ(1918-1989)の愛想曲集。イタリアで生まれ、壮年期以降をザグレブで送ったアントニオ・ヤニグロ。50年代には次の世代を担う世界最高のチェリストとまで言われ多くの録音も残したが、70年代を前に手の故障で演奏家としてのキャリアを断念せざるを得なくなる。その後は自ら設立したザグレブ室内合奏団の指揮者として活躍。ぼくが高校生の時分、彼の名前に触れたのもチェリストとしてではなく、指揮者としてその合奏団を振ったレコードだった。
それにしてもこの盤は素晴らしい。多分この十数年の間でもっとも取り出すことの多かった盤の中の一つで、本ブログでも過去に何度か取り上げた。手元にあるいくつかのチェロ小品集の中で群を抜いて素晴らしい演奏だ。手持の盤は2004年に日本コロンビアから出た<ヴァンガード名盤選>と称する廉価盤だがすでに廃盤で、結構な中古価格がついている。1961年録音。ピアノ伴奏はアントニオ・ベルトラミ。収録曲は以下の通り。
1.「ゴイェスカス」~間奏曲(グラナドス)
2. シシリエンヌ(パラディス)
3. 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番BWV1003~アンダンテ(バッハ)
4. ソナタ ニ短調第2巻の5~アレグロ・スピリトーソ(スナイエ)
5. 夢のあとにop.7-1(フォーレ)
6. 村の歌(ポッパー)
7. わが母の教え給いし歌op.55-4(ドヴォルザーク)
8. 「恋は魔術師」~火祭りの踊り(ファリャ)
9. 白鳥(サン=サーンス)
10. 蝶々(ポッパー)
11. メロディ ヘ長調op.3-1(ルビンシテイン)
12. 夜想曲 嬰ハ短調 遺作(ショパン)
13. グラナディーナ(ニン)
14. エレジー ハ短調op.24(フォーレ)
15. ハバネラ形式の小品(ラヴェル)
16. 熊蜂の飛行(リムスキー=コルサコフ)
お馴染みの…といっていいチェロ小品が並ぶが、時代と地域そして緩急取り混ぜた好選曲。そしてヤニグロのチェロはそれぞれの曲想によって見事に語り口を変え、それぞれの曲の魅力をあふれんばかりに引き出している。全体にゆったりとしたテンポをとり、なおかつフレーズの進行を決して急がない。もちろん技巧のキレと安定性は十二分で、テンポを遅くしていても速度が遅いという感じにはならず、あくまで音楽の呼吸が深く余裕があると言ったらいいだろうか。中でもグラナドス、バッハのBWV1003のアンダンテ、フォーレの2曲が曲の良さもあって光る。火祭りの踊りでの明暗の描き分けとドライブ感あふれるボウイングも素晴らしいし、有名な白鳥では歌い過ぎずに楚々として格調が高い。
自分の好みの盤をあれこれ他人に薦めることはしないように心がけているが、この盤だけは事あるごとに強力プッシュしてしまう。チェロのこうした小品集として手元にはジャンドロン、藤原真理、徳永兼一郎、トルトゥリエ、シュタルケル他の盤があるが、いずれもヤニグロには及ばない。この盤に関して、これ以上ないというくらいの賛辞を送りたい。
手持のCDからアップしてみた。以下の7曲。
「ゴイェスカス」~間奏曲(グラナドス) /アンダンテ(バッハ)
夢のあとに(フォーレ)/火祭りの踊り(ファリャ)
夜想曲嬰ハ短調(ショパン)/エレジー(フォーレ)/熊蜂の飛行(リムスキー=コルサコフ)
この時代によくあったやや左右泣き気味の録音だが、チェロの音は生々しく録られていて申し分ない。よく聴くと思わぬバックグラウンドの音が混じっていて失笑する(ここでは種明かしはしないが…)
フォーレ<夢のあとに>を弾くヤニグロ。シブい!
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