クレツキの第九




平成三十年戌年師走。月があらたまって今年もラスト・ワンマイル。ますます加速するわが老いらく人生成れの果て…嗚呼。まあ、ぼやいても仕方ないので、前向きに音盤タイム。今夜も先日来の続きで、こんな盤を取り出した。


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パウル・クレツキ指揮チェコフィルハーモニーによるベートーヴェンの第九交響曲。
1900年ポーランド生まれの指揮者クレツキとチェコフィルとのこのベートーヴェン交響曲全集の録音は60年代半ばから始まり、一部は1968年初頭に及ぶ。1968年といえばその夏にチェコ事件のソ連侵攻があった年だ。かつてチェコフィルは弦楽器群の美しいオーケストラとして知られていた。60年代後半はまさにチェコフィルにとってのよき時代であった。このベートーヴェンからもその片鱗がうかがえる。手元には先年リリースされたCDによる全集と、LP盤の第九が二種類ある。今夜はこの録音の国内初出盤のLPに針を下した。

クレツキはこの第九を速めのテンポとどちらかといえば短めのフレージングで進めていて、ドイツ風の重く深いアインザッツからは遠い。チェコのレーベル;スプラファン録音によるこの盤のチェコフィルの弦楽器群は切れ味がよく、よくこのオケを評して使われる「燻し銀のような」というよりは、もっと現代的な、磨きたてのスターリングシルバーのイメージだ。しかし木管楽器が控えめにブレンドされた音でサポートするせいか派手な音ではない。このあたりの音作り、60年代後半のチェコフィルの録音は、マタチッチのブルックナーなどにも共通しているように感じる。第1楽章の展開部でオケの強奏が続くくだりでも音がダンゴになるのを避け、各声部を浮き立たせるようにパートごとの音量とダイナミクスをよくコントロールしている。

第2楽章は中庸のテンポ。第3楽章は演奏時間14分とトスカニーニ並みの速めのテンポで進む。テンポは速めだが曲の運びは自然で急いでいる感じはない。終楽章に入ると音楽は次第に熱を帯び、出だしの低弦群によるレシタチーボも雄弁だ。しかし決して各パートは混濁せず、音楽の組み立ての明確さは変わらない。そしてチェコフィル付属の合唱が素晴らしい。ブリガリアをはじめ、東欧諸国は昔から合唱王国と言われる。さもありなんという素晴らしく広がりと余裕のある合唱を聴くことができる。ドイツ風の迫力や整然さとは少し違い、団員一人一人の姿が見えるような合唱といえばよいかもしれない。合唱の主部に入ってからクレツキはかなりテンポを落とし、じっくりと合唱を歌わせる。

振り返ればチェコフィルと深い関係のあった他の指揮者、アンチェル、クーベリック、ノイマンらを差し置いて、チェコフィルがクレツキと初めてのベートーヴェン交響曲全集を作ったのも必然あってのことだろう。クレツキとチェコフィルによるこの全集は他の曲も総じて速めのテンポとフレッシュな弦楽をベースに明確に各声部を描き分け、そして時折熱く鋭い切れ込みを聴かせてくれる、味わい深い名演だ。


この曲の音源。全4楽章


第2楽章のリスト編によるピアノ独奏版。退屈な芝居の場を称して弁当場という言葉がある。以前はこの第2楽章を弁当楽章と感じたこともあったのが、最近は滅法面白い!


同楽譜付き音源。



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