バッハ ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 BWV1041
数日前の通勤車中で聴いたバッハのヴァイオリン協奏曲で思い出し、こんな盤を取り出した。

諏訪内晶子の弾き振りによるバッハ;ヴァイオリン協奏曲集。2006年録音。収録曲はヴァイオリン協奏曲第1番と第2番、二台ヴァイオリンのための協奏曲、そしてヴァイオリンとオーボエのための協奏曲。いずれもバッハ器楽曲中の名作だ。以前も何度か記事に取り上げたはずだ。手元にはこの曲の盤として、古いオイストラフやシェリング、グリュミオー他もあるが、近年はもっぱらこの盤を手に取ることが多い。
ピアノやヴァイオリンの<弾き振り>はバロックから古典期までの曲ではよくあるスタイルだ。とはいえこのバッハの曲で独奏パートが休みの間、終始オケを実際に指揮しているわけではなく、曲作りを彼女が主導し、具体的な指示や演奏時のアインザッツを彼女が行なっているということだろう。従ってこの演奏は独奏部分とオケ部分合せて曲全体として諏訪内流に仕上がっているものと思う。オーケストラは80年代初頭に当時の若手腕利きを集めて指揮者アバドによって設立されたヨーロッパ室内管弦楽団が受けもっている。
先ほどから第1番イ短調を聴いている。一聴して流麗な演奏。独奏者もオケもモダン楽器を使いながらも、多分にピリオド奏法に近い弾き方をとっている。わずかなヴィブラート、音の立ち上がりに際しては深いアクセントはおかずに速いボウイングで音をスッと立ち上げ、また音価も短めにとって、スッと終わらせている。その結果生じる音符と音符の間を埋め合わせるようテンポはやや速めになる。
では清涼飲料水のようなさらりとした演奏かというと、これがそうでもない。全体的な印象としては、ピリオドスタイルを取り入れているといっても軸足はオーソドクスでマイルドな印象。テンポも決しては速すぎない。加えて諏訪内の指示とオケの性格とが相まってか、独奏・オケ部とも各声部の動きと対比が闊達だ。ほんの2小節程度のフレーズであっても、その中でのディナーミクを大きく変化させているし、各声部の絡み合いもそれぞれが積極的に仕掛けていて緊張感を高めている。特にチェロ・コントラバスの低弦群が実に表情豊かで、曲全体が生き生きと躍動している。このあたりはチェロやコントラバスの基音までしっかり再生されないと印象が異なってくるだろう。オーディオ装置は音楽を聴く単なる手段ではあるが、その再生能力次第で演奏者の意図がきちんと分かるかどうかのサンプルのような演奏であり録音だ。この盤では低音域の処理が上手く行なわれているためか、そう大掛かりな装置でなくてもまずまずの音で楽しめる。しばらく前からの愛器アヴァロンで聴くと、低弦群の表情、ヴァイオリンのボウイングのニュアンス、演奏者の息遣い、音楽を楽しみ理解するために必要な情報が漏らさず、デフォルメせずに再現される。
バッハのヴァイオリン協奏曲はいずれも素晴らしい。対位法を駆使してモチーフが各声部で絡み合う様、ホ長調の第2番を除き短調を取ったことによる深い情緒表現など、何度聴いても飽きない名曲だ。
手持の盤から第1楽章をアップしてみた。
楽譜付き音源。もう少しゆっくりやってくれたら、初見練習兼ねてギターで追いかけるのだが…(^^;
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