おおっ、三連休ではないか!  ヤニグロのチェロを聴く

さて週末だ。
気の重い月曜の朝に比べ、金曜の夜のゆるみ方はいかばかりだろう。定年になって『サンデー毎日』状態になったら、それはバラ色か。まあ、そんなことはないのだろう。月曜があるから金曜もある。そう思い、一喜一憂しながらサラリーマンの日々は過ぎていく。金曜の今夜はチェロの演奏でも聴こうか。深く豊かな低音の響きと、伸びやかに歌い上げる高音を併せ持つチェロは、いつ聞いても心安らぎ、ときに心沸き立つ。今夜取り出した盤はこれだ。


A・ヤニグロのチェロ愛奏曲集


アントニオ・ヤニグロ(1918~1989)。
初めてその名を聞くと、中南米のプロレスラーではないかと思いような名前だ。イタリアで生まれ、壮年期以降をザグレブで送った。50年代には、次の世代を担う世界最高のチェリストとまで言われたヤニグロ。しかし70年代を前に手の故障で演奏家としてのキャリアを断念せざるを得なくなる。その後は自ら設立したザグレブ室内合奏団の指揮者として活躍した。ぼくが初めて彼の名前に触れたのもチェリストとしてではなく、指揮者としてその合奏団を振ったヴィヴァルディ『四季』のレコードだった。それにしてもこのヴァンガード盤は素晴らしい。まず選曲がいい。

1.「ゴイェスカス」~間奏曲(グラナドス)
2. シシリエンヌ(パラディス)
3. 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番BWV1003~アンダンテ(バッハ)
4. ソナタ ニ短調第2巻の5~アレグロ・スピリトーソ(スナイエ)
5. 夢のあとにop.7-1(フォーレ)
6. 村の歌(ポッパー)
7. わが母の教え給いし歌op.55-4(ドヴォルザーク)
8. 「恋は魔術師」~火祭りの踊り(ファリャ)
9. 白鳥(サン=サーンス)
10. 蝶々(ポッパー)
11. メロディ ヘ長調op.3-1(ルビンシテイン)
12. 夜想曲 嬰ハ短調 遺作(ショパン)
13. グラナディーナ(ニン)
14. エレジー ハ短調op.24(フォーレ)
15. ハバネラ形式の小品(ラヴェル)
16. 熊蜂の飛行(リムスキー=コルサコフ)

朗々と歌うゴイェスカス間奏曲で、たちまちヤニグロの素晴らしいチェロの音色の心を奪われる。バッハBWV1003での呼吸の深さはいかばかりだろう。火祭りの踊りでのダイナミズムも目が覚めるようだ。フォーレの2曲も淡々と始めながら、じわじわと深い情緒に満ちている。いずれの曲のよく歌い込んでいながら、テンポがぶれず安定している。音楽の格調が高いのだ。録音もすこぶる良好で、伴奏を務めるアントニオ・ベルトラミのピアノとのバランスもよい。そして選曲だけでなく、曲の並びもよく考えられている。No.8の火祭りの踊りが終わったところで、お茶でも飲んでちょっと休憩しよう。一息ついたところで、プレイボタンを押し、白鳥を聴くのがよい。さながらヤニグロのリサイタルに行き、休憩をはさんで一晩のプログラムを楽しむ感覚だ。
この盤は2005年にコロンビアからヴァンガード名盤選というシリーズで発売された。この数年でいったい何度聴いたことだろう。チェロのこうした小品集として手元にはジャンドロン、藤原真理、徳永兼一郎などの盤があるが、いずれもヤニグロには及ばない。この盤に関して言えば、ぼくはこれ以上ないというくらいの賛辞を送りたい。ぼくのレコード棚にはヤニグロの盤として他に、ライナー・シカゴ響とのR・シュトラウス『ドン・キホーテ』、ベートーベンのチェロソナタ集や『大公』、黒人指揮者ディーン・ディクソンとのドボルザークとハイドンのチェロ協奏曲などがある。いずれまた聴くことにしよう。
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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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