A・ペドロッティのブラームス
月が改まり、令和元年霜月。台風被害でてんてこ舞いしているうちに十月が終わってしまった。遅まきながらの秋の好日。きょうはこんな盤を取り出した。

アントニオ・ペドロッティ指揮チェコフィルハーモニー管弦楽団によるブラームスの交響曲第4番ホ短調。録音は1957年(モノラル)。十年程前に日本コロンビアからリリースされたスプラフォン・ヴィンテージ・コレクションの中の1枚だ。アントニオ・ペドロッティと聞いてピンとくる人は相当なマニアかオールドファンだろう。1901年に生まれ1975年に没したイタリアの指揮者。最近では彼の名を冠した「アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクール」の方が有名だろうか。指揮者三ツ橋敬子さんは2008年にこのコンクールで最年少優勝してデビューを飾った。ぼくもペドロッティの名前だけは知ってはいたが録音は持ち合わせていなかった。十年程前、たまたま入った店で「アナログ時代の幻の名盤、待望の復刻」をいう帯のコメントが目にとまりレジに持っていった。
このブラームスが中々の聴きものだ。帯の売り文句も伊達ではない。
第1楽章はやや速めのテンポで推進力を感じさせる運びながら、決して前のめりにならず正確なタクトで進む。ラテン系指揮者にありがちなせかせかしたところがなく、またドイツ系指揮者にイメージする深く重いアインザッツでもないが、響きは充実していてブラームスらしい重量感に不足はない。そしてともかくよく歌う。冒頭のメロディーからフレーズの中で起伏を持たせて歌い上げ、更に一つ一つの音に力が満ちている。ところどころで打ち込まれるティンパニ、響き渡るホルンや金管群も全体のバランスを崩さずによく存在感を主張している。全てにペドロッティのコントロールが行き届いている演奏だ。
第2楽章以降もやや速めのテンポでよく歌う弦楽群、特にヴァイオリン群の熱いカンタービレが印象的だ。濃い口の表情付けではあるがテンポが速めで、しかもフレーズごとに立ち止まることなく前進するので、もたれた感じにはならない。総じてひと言でいえばイタリア風ブラームスということになるだろうが、この語感から受けるネガティブなイメージはなく、この曲が持つ晩秋の枯れた味わいには遠いものの、純粋にメロディーを熱く歌い上げることで、この曲の持つ情熱的な側面を引き出した名演といえるだろう。
この盤を含む日本コロンビアの復刻盤シリーズには以前記事にしたアンチェルの録音他、味わい深い名盤がたくさんあったが、プレス数も少ないのか現在すでに入手困難なものも多い。なお、このシリーズを含む一連の復刻盤デジタルマスターの作成は、近年数多くのアルバムを手がけている日本コロンビアのマスタリング・エンジニア;山下由美子さんが担当していることを付け加えておく。
この盤の音源。ブラームス交響曲第4番全楽章
併録されているブラームスのハイドン・ヴァリエーション。こちらは1966年のステレオ録音。
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