手帳の季節



80年代後半バブル期に登場したシステム手帳。70年代から文具好きだったぼくには格好の遊び道具で、勤務先社内でも真っ先に手に入れた。しかし、地味なメーカー勤務の若造には、クライアントやらプレゼンやらアポやら、当時流行りだしたカタカナ用語も日常スケジュール管理も無縁で、出始めたワープロを駆使して作った自家製リフィルも空白ばかり。結局その頃の記録はほとんど散逸した。まあ、大した記録もないし、そんな記録を見返して懐かしがっても仕方ないのだが…。その後、馬齢を重ね、会議と出張に忙殺されてスケジュール管理が必須になってからは、普通の綴じ手帳を使い始めた。それでも少々こだわって横長開きの手帳を探し、分不相応にもエルメスの手帳に手を出したこともあったが、十数年程前に英レッツ社の横長開きのものを見つけてからは、それに落ち着いた。田舎の店にもこの時期手帳コーナーが店開きするが、レッツ社のものは置いてない。来年2020年用も先日、都内での仕事帰りに丸善で調達した。


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上着の内ポケットにサッと収まる大きさと絶妙の縦横黄金比、シンプルながらチープさとは無縁の品格あるコスメティック、あれこれと押し売りしないページ内コンテンツ、万事中庸をよしとする英国魂とでもいうべき逸品だ。人によっては書き込みスペースが不足するだろうが、ピークを過ぎた老兵サラリーマンが程々の公私日常を管理するにはジャストフィット。同じサイズでも記載フォーマットで多くのバリエーションがあるが、ぼくの場合は横見開き1週間のもの。今年までの十数冊を重ねてみると、そこそこハードだったこの間の勤め人人生を思い出す。巻末には数ページに渡って英国の地図。昨年までは世界地図だったが、今年から英国オンリーに変わった。グレイト・ブリテンを見開き、都市の名前を見ているだけでも、音楽にまつわる名前やタンノイ社製スピーカーのモデル名を見つけて、ちょっと心和む。

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手帳への書き込みはもっばらシャープペン。ゼブラの百円シャープは耐久性・フィット感とも及第だが、人前では体面重視でLAMY2000シリーズに持ち替える。漆黒のミニマルデザインは60年代独工業意匠の傑作。フォーマル、カジュアル、どんな場面でも取り出せる。シャープ・4色ボールペン・万年筆(太字・中字)勢揃い。見かけに反して万年筆のタッチはとても柔らかく、たっぷりとしたインクの出具合もあって書き味は申し分ない。4色ボールペンもスリムなデザインで、これなら多色ペンを持ってもいいかと納得した。シャープペンはメカニックの出来がイマイチで、一度修理に出したがまともには治らなかつた。仕事用ノートへは殴り書きも多く、ステッドラー社0.7ミリ芯製図用モデル925を何年も使っている。田舎の文具店にもあって500円也。ペン軸のメーカーロゴの印刷はとっくに消えて見えなくなったが、それ以外は滅法丈夫で壊れない。

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B級万年筆コレクションも最近は出番がなくなった。中にはまともなペンもあって、以前は書類へのサインや書き込みにべリカンを使ったり、あらたまった席での記帳にモンブラン149を胸ポケットから取り出したりもしたが、少々大仰と心得て止めた。 中国製というよりは中共製という方が似合うパーカーコピーの<英雄>も数本ストック。文革時代の60年代後半に上陸。某新聞社の記者が絶賛し、数年聞流通したが、その後いつしか消えていった。ぼくも当時手に入れて、せっせとラブレターを書いたものだ(もちろんすべてが徒労に終わった)。<英雄>はいずこへと思っていたら、90年代半ばに上野アメ横で見つけて購入。まだデッドストックがあったのかと驚いたが、2000年代になってから仕事で中国に出張した際、上海のデパート文具売り場に、呆気ないほど当時のままの姿で並んでいた。

気心知れた友と手書きの書簡を往復させる風情に憧れたものだが、そういう相手も中々いない。そもそもこちらも手書きで文章を書けなくなった。PCに向かって<ひとり交換日記>のような与太ブログが続く。ナンだかなあ…という感じであります。


数年前に話題になった動画。公開後、パイロット社へはNamiki_Falconの国内モデル:パイロット・エラボー万年筆の注文が殺到した。


日本語はいかに。



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おや、キャンディも

セーラーの廉価万年筆のはしりだった「キャンディ」水色がちらりと見えますね。当方、学生時代にこの茶色版を愛用していました。書き味はカリカリの「いかにも」な鉄ペンで、キャップが壊れて処分しましたが、1970年代ですのでほぼ半世紀前ですね。いつごろまで販売されていたのかわかりませんが、懐かしい製品です。
備忘録ノートは、一時Jetstreamボールペンにはまりましたけれど、その後プラチナの古典ブルーブラック・インクを使い始めたら、裏抜けしにくい特性に惚れ込んで、これが主体になりました。細字、中字、各種万年筆に充てんして愛用しております。愛用の万年筆にて日々よしなしごとを書き綴るのはいとよろしきことに感じております(^o^)/

文房具も男心をくすぐりますよね。
私はスケジュール帳は使いませんが、ノートはLife製VincentノートA5サイズに行き着きました。これなら万年筆で書いても裏写りしないので。
万年筆はAmazonをウロウロしてて見つけたXEZOというブランドのインコグニート。クオリティは低い製品ですが誰も知らないのと見た目がカッコ良くて選びました。(汗)
試し書きなどせず見た目重視で選ぶところはギター選びと同じですね。(爆)

Re: おや、キャンディも

narkejp さん、どうも!
水色のキャンディ…よく見ると音符の絵柄が見えると思います。これ楽譜書き用のキャンディです。ペン先が幅広で、インクを繰り出すスリットが2本入っています。カリグラフィ用などでもあるかな。書く方向によって、音符の棒と玉や旗を書き分けられます。当時、専用のペンは何千円がしたものを、格安で手に入れられて、喜んだものでした。

Re: タイトルなし

みっちゃんさん、どうも!文具に目覚めて半世紀そして只今桃子ロスの与太です(^^;
紙との相性も重要ですね。書き味、裏抜け…万年筆の場合は特に。 最近は手書きがめっきり少なく鳴りましたが、少なくなったゆえにこだわりたい気持ちもよく分かります。Vincetノートは楽譜用もありますね。 今度、手に取ってみましょう。
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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