H・シェリング:ラテンリサイタル
二月もぼちぼち下旬。ひと雨ごとに春の気配。こんな夜には浸透力のあるヴァイオリンでも聴こうかと音盤棚を見回し、久しぶりにこの盤を取り出した。

ヘンリク・シェリング(1918-1988)がスペイン・ラテン系作曲家の小品を弾いた、その名も<アンダルシアのロマンス~ラテン・リサイタル>と題した1枚。1969年5月パリ・エコールノルマルでの録音。ピアノはクロード・マイヨール。手持ちの盤は、1980年に廉価盤で出たときのもの。収録曲は以下の通り。
sideA
1.「はかなき人生」~スペイン舞曲第1番(ファリャ)
2.歌と踊り第1番(モンポウ)
3.ジプシー娘の踊り(ハルフテル)
4.アンダルシアのロマンスop.22-1(サラサーテ)
5.サバテアードop.23-2(同)
6.遥かなる歌(グァルニエリ)
7.セルタンの夜曲(ミニョーネ)
sideB
8.前奏曲op.16(カミーニャ)
9.かがり火のほとりでop.16(ヴァーレ)
10.平原(グァスタビー)
11.祖国から(マロキン)
12.メキシコ舞曲(ロロン)
13.無伴奏の前奏曲(カリーリョ)
14.短いソナタ(ポンセ)
お馴染みの曲、少し珍しい曲、あれこれ取り混ぜて全編これラテン系。この手の盤の先駆はクライスラーやハイフェッツあたりということになるが、これだけ徹底してラテン系というのは珍しい選曲かもしれない。よく知られている通り、シェリングは第2次大戦前後からメキシコとのつながりが強く、のちにメキシコに永住することになる。ポーランド生まれで欧州で音楽のキャリアを積み、バッハやベートーヴェンなどではいたって正統派の演奏を残した。一方でスペインの影響色濃いメキシコと相思相愛というのも、何か身体の奥底の共感があったに違いない。
ラテン風のリズム(ハバネラ、サパティアード等)にのり、耳に心地いい情熱と哀愁に満ちた旋律が続くが、一方でカリーリョ<無伴奏のプレリュード>や3楽章形式のポンセ<短いソナタ>など、近現代の和声を織り交ぜた作品も取り上げられている。またファリャ、モンポウ、サラサーテなどに混じって、グァルニエリ、ミニョーネ、カミーニョ、ヴァーレといったあまり馴染みのない作曲家も取り上げられ、このアルバムが安直なポピュラーアルバムに終わっていないことを示している。録音も優秀。今時ならもっと雰囲気重視の録り方をするだろうが、この盤ではヴァイオリンの音像も中央やや左側のかなり近い位置に定位し、生々しいボウイングもリアルのとらえられている。
この盤の音源。スペイン舞曲第1番(ファリャ~クライスラー編)
ファリャのスペイン舞曲第1番はギター弾きにもお馴染みだ。名手エドソン・ロペスの弾く同曲。
ノスタルジックなサブレ・マロキン<祖国から>
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