フランツ・クロンマー:管楽合奏のためのパルティータ集



月日を重ねて音盤や本が溜まり、同時にこちらの記憶力が低下。その結果時々起こるのがダブり買いやうっかり買いだ。ダブり買いはおそらく誰でも一度や二度は経験があるだろう。手元の音盤棚にもダブり買いしてしまい、いずれ誰かにあげようかと思って封を切っていないCDが何枚かある。きょう取り出したのはそうしたダブり買いではなく「うっかり買い」した一枚。もう少し正確にいうと、うっかり間違えて買ってしまった盤だ。


202004_Krommer.jpg


フランツ・クロンマー(1785-1831)の「管楽合奏のためのパルティータ集」と題されたナクソス盤。演奏しているのはブダペスト管楽アンサンブルという団体。カールマーン・ベルケシュという指揮者が振っている。1995年録音。十年程前に近所の書店のナクソス盤コーナーで手に入れた。

この盤を店で見かけたとき、フランツ・クロンマーという初めて聞く名前に目がいき、次に<ベートーヴェンのライバル>という帯のコピーに目がいき、同時に<管楽合奏のためのパルティータ集>というタイトルに目がいった。あまり知られていないウィーン古典派の作曲家、そして管弦楽曲集…と認識して、当時クラウスやヴァンハル、フンメルらに興味を持っていたこともあり迷わずレジに持っていった。帰宅してプレイヤーにセットして出てきた音を聴いて、あれっ?。スピーカーから出来てきたのは「管弦楽」ではなく「管楽」だったのだ。英文タイトルのWind Ensenbleという文字をあらためて見て判明した。この盤は管楽のための作品集であって、管弦楽のためものではなかったのだ。

フランツ・クロンマーは1785年にモラヴィア(チェコの東部地域。ちなみ西部がボヘミア)に生まれ、1831年ウィーンで亡くなった。あちこちの宮廷や聖堂、劇場の楽長を務めて300曲を超えるあらゆるジャンルの曲を残したいう典型的なウィーン古典派の作曲家。自作の年表で確認すると、ちょうどベートーヴェンやディアベリ、ウェーバーらと重なる。この盤には当時流行っていた管楽器アンサンブル用に書かれた組曲が4つ(他に小さな行進曲が3つ)収録されている。編成はオーボエ2、クラリネット1、ホルン2、バスーン1、ダブルバスーン2の八重奏。曲によってトランペットが入る。組曲といってもバロック期の舞曲形式の組曲ともちろん違い古典形式の4つ楽章からなる組曲。管楽器による小交響曲といってもおかしくない構成だ。曲想は典型的なウィーン古典派のそれで、どこから聴いても古典的和声と整った様式にあふれている。時代的には古典派でも後半に属するが、曲想はモーツァルトやハイドンなどに近く、つまりウィーン古典派という範疇にあってはオーソドクスあるいは保守的な作風といえる。しかしジャケットの帯に書かれていた<ベートーヴェンのライバル>という名に恥じず、主題の切替えや展開では効果的な転調やテクニカルなフレーズなどが繰り出され、凡庸なウィーン古典派に時々あるような冗長さや退屈さは感じない。

管楽器に特別な思い込みのないぼくなどは、これで弦楽が入っていたら更に豊かな響きで楽しめるだろうと思ってしまう。おそらくは当時腕に覚えのある管楽器愛好家らが集まってアンサンブルを楽しんだり、仕えている貴族のパトロン達を楽しませたのだろう。そんな時代の雰囲気を想像しながら聴くのも古典を聴く楽しみの一つだ。うっかり買いではあったが新たな作曲家の作品に触れるきっかけになった一枚。結果オーライでよしとしよう。


手持ちの盤からアップした。パルティータヘ長調作品57 全4楽章


貴重な古典派短調作品から二つ貼っておこう。
フルート協奏曲ホ短調作品86


交響曲第4番ハ短調 第1楽章。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
05 | 2023/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
月別アーカイブ
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)