セゴビアSPコレクション



最近はギターの新録音を手にすることもほとんどなくなり、以前から手元にある古い盤を聴き返すことが多い。60年代以前の多くの録音は、現代の技術レベルからすれば見劣りするものが多い。スタジオでの正規録音でもミスタッチが混じることは稀ではなかった。それでもそうした古い録音に手が伸びる理由は、個性的な音色と演奏スタイル(好き嫌いは横に置くとして)が色濃く残っているからだ。ギターの限らず、他の楽器やオーケストラでも同じようなことが言われること多い。その理由はここに連ねるまでもないだろう。ことクラシックギターに関して、やはりアンドレス・セゴビア(1893-1987)の個性は突出している。先日も彼のLP盤を聴いたのを思い出し、今夜はこんな盤を取り出した。


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セゴビアSPコレクションと称する2枚組CD。80年代の終わりにワーナーパイオニアから出た例のセゴビアコレクション全16巻の番外編として1989年にリリースされた。時すでに第2次大戦真っ只中の1944年1月10日から29日までの3週間に渡って米デッカ(MCA)のために録音したすべての曲が収められている。少々長くなるが収録曲を以下に記しておく。

CD1
1. 第1番 ハ長調作品6の8 /ソル
2. 第2番 ハ長調作品35の13 /ソル
3. ソナタL.352 K.11 /スカルラッティ
4. メヌエット /ラモー
5. 第5番ロ短調作品35の22 /ソル
6. 第4番二長調作品6の1 /ソル
7. 新しいアイルランドの調べ /パーセル
8. メヌエット /パーセル
9. ジグ /モルガン
10. ガリアード /ダウランド
11. アンダンテ /ハイドン
12. 第3番イ長調作品6の2 /ソル
13. 第6番ニ長調作品35の17 /ソル
14. 第9番イ短調作品31の20 /ソル
15. 第10番イ長調作品31の19 /ソル
16. 聖母の御子 /カタルーニャ民謡
17. アメリアの遺言 /カタルーニャ民謡
18. 第19番変ロ長調作品29の13 /ソル
19. サラバンド /ポンセ
20. ガヴォット /ポンセ
21. メヌエット /ハイドン
22. 第12番イ長調作品6の9 /ソル
23. 第15番ニ短調作品35の16 /ソル
24. 第8番ニ短調作品6の9 /ソル
25. 第11番ホ長調作品6の3 /ソル
26. 第20番ハ長調作品29の17 /ソル
27. ダンサ・モーラ /タレガ
28. メヌエット /タレガ
29. ブルガーサ /トローバ
30. アルバーダ /トローバ
31. アラーダ /トローバ

CD2
1. グラナダ /アルベニス
2. スペイン舞曲第10番 /グラナドス
3. パバーナ第6番 /ミラン
4. パバーナ第4番 /ミラン
5. パバーナ /サンス
6. ロマンス /パガニーニ ポンセ編
7. スペイン舞曲第5番 /グラナドス
8. 朱色の塔 /アルベニス
9. トナディーリャ /グラナドス
10. セビーリャ /アルベニス
11. エントラーダとジーグ /ド・ヴィゼ
12. ジーガ・メランコリ /セゴビア
13. ブーレ /ド・ヴィゼ
14. メヌエット
15. カンツォーネ
16. サルタレッロ

こうしてみると後年の再録音やセゴビア編の楽譜でもお馴染みのオハコが並んでいる。CD1ではソルの練習曲(特にセゴビア編20の練習曲)が、そしてCD2ではスペインものが過半を占めている。個々の曲の演奏や解釈は後年、60年代以降の再録音のものに比べ、総じてテンポが速いものの基本は大きく変らない。その解釈については、現代的な視点でみると異論を免れないものではあるが、それよりもこの盤でもっとも注目すべきは、セゴビアの奏でるギターの音色そのものだ。使用楽器はハウザーI世(独1882-1952)。そしてまだナイロン弦はなく、ガット弦が張られていた時期にあたる。つまり、20世紀初頭のスパニッシュギターを範にしたドイツ製ハウザーギターとガット弦の音がよい条件で聴けるアルバムということになる。

SP盤用の録音ということではあるが、1940年代半ばの録音としては音の状態がいい。もちろんSP盤から<板起し>をしたわけでないので、SP盤再生に付いてまわる針音はない。ギターの目前にマイクを置いて録られた音のようで、しかもほとんど残響のないデッドな録音のため、セゴビアのタッチに反応するギターの音色が生々しく聴こえてくる。ハウザーギターとガット弦による音は甘く太く、同時にカリッとした立ち上がりの良さも兼ね備えている。ヴィブラートのかかり具合も現代のギターよりも強い。一方で、サステインは短めでコロコロした音色。6弦低音の音も特徴的で、低めのウルフトーンに支えられ、6弦ローポジションの音がドンッと響く。

94歳で亡くなる直前まで現役であったセゴビア(1893-1987)にとって、録音当時の50歳はまだまだ青春だったかもしれない。時折聴かせる技巧の切れは素晴らしく、また特徴的なタッチとそこから生まれるセゴビアトーンは、後年の録音よりも一層個性的。現代の多くの名手と違って、音を聴いてすぐにそれを分かるセゴビアは、やはりワンアンドオンリーの存在だ。


この盤と同じ音源によるグラナドス<トナディーリャ=ゴヤの美女>


同 アルベニス<朱色の塔>


没後30年の2017年夏、NHK・Eテレでのセゴビア特集。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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