ムターのデビュー盤



週半ばの水曜日。午後から霞ヶ関某庁にて仕事。予定通り終了。暑さの中の移動で汗だくに。やれやれ気分で帰宅してようやく一服。部屋を冷やしてアンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。


202008_Mutter_WAM_Vcon.jpg


アンネ=ゾフィー・ムター(1963-)によるモーツァルト協奏曲集。彼女のデビュー盤。バックは言わずと知れた、ムターを見出し世に送り出したカラヤン指揮のベルリンフィル。1978年フィルハーモニーでの録音。録音技師にはカラヤンの耳といわれた、お馴染みギュンター・ヘルマンスの名がある。

久々に聴いたのだが、何という安定感だろうか。カラヤンが主導したと思われる中庸なテンポ、ベルリンフィルのよくブレンドされた響き、そしてムターの14歳とは思えない成熟して落ち着き払ったソロ。独墺あるいは中欧の伝統的な響きと解釈といったらいいだろうか。昨今、こうした落ち着いたモーツァルトはもう聴けないかもしれない。ピリオド奏法、オリジナル回帰、それぞれに主張あってのことだろうが、18世紀当時からの伝統、そこに19世紀末から20世紀初頭のロマンティックな解釈がのり、更にカラヤンのような20世紀の新しい旗手によりリフレッシュされ…そうした流れの結末にあるような演奏だ。
ムターは14歳のときこの盤で世に出て以来、スター街道を走ってきた。ぼく自身はそれを追っかけてきたわけでもなく、一時期は随分と厚化粧の解釈になった時期もあっようだが、最近またモーツァルトやバロックへの回帰に取り組んでいるとか。キャリアは長いがまだ五十代半ば。まだまだ楽しみだ。


この盤の音源。第5番イ長調第1楽章。


同じく第5番。ムターは十数年前に全曲を弾き振りで再録している。その頃の音源。デビュー盤に比べると主部のテンポはかなり速く、小編成のオケによりダイナミクスの振幅も明快かつ大きい。さらに細部は念入りになって、ときに濃厚な味わい。


この盤の音源。第3番ト長調第1楽章。




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