KEBONY材ギター



先日、都内での仕事を少し早めに切り上げ、上野・入谷にあるギターショップ「アウラ」へ。少し前にKEBONY材という新しい素材を使ったギターが完成したとのことで、その検分でお邪魔した。アウラへは昨年夏に製作家田邊氏に誘われて本家トーレス極上品の検分をして以来だ。


表板は斑入りのスプルース。横裏板にKEBONY材。ヘッドもKEBONY材張り。
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KEBONY材というのは、ごく簡単にいうと針葉樹を加工して広葉樹のような材質に変えるというもの。下記HPによれば、アルコールを加圧含浸させて加熱・乾燥処理をすることで、軽く柔らかな針葉樹から重く硬い材質が得られるという。

https://www.barcelona-trade.com/brands/kebony.html

広葉樹、特に熱帯地域に生育するローズウッド系の木は、緻密・堅牢で美しい木目を持つことから古来、家具や調度品、楽器等の材料として広く用いられてきた。とりわけギターにおいては、横・裏に使う材としてブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)を始め、中南米産ローズウッドやインディアンローズウッド等が使われている。

一方でそうした樹木の多くは生育に年月を要し、多用することイコール資源の枯渇につながり、すでに90年代初頭からハカランダ等はワシントン条約の対象として伐採や移動に制限がある。ギターの横裏材としてはメイプルやシープレス(糸杉)なども使われるが、ことクラシックギターに関しては独特の美しい木目をもつローズウッド系の材が、やはり珍重される。材料枯渇は当然価格高騰も意味し、同じ仕様のギターでも通常のインディアン・ローズウッドと使ったものが50万円とすると、マダガスカル・ローズウッド仕様は70万、ハカランダ仕様は100万といった具合に、まるで出世魚のごとく価格アップする。

そうした状況を受けて代替材の検討も種々行われてきたが、今回、先のリンクにある建材等で実績が出来つつあるKEBONY材を使ってクラシックギターを作るという試みがアウラで行われた。クラシックギターとしてはおそらく業界初。詳細は以下のリンクに詳しい。

https://www.auranet.jp/salon/report/kebonyproject/


さてそのKEBONY材のギターや如何に…
出来上がった楽器の外観は通常のものと変わったところはない。原材料の大きさから、裏板は通常の2枚接ぎには出来ず、4ピース構成になっているが、これは古くから使われる手法。横裏材の色合いや木目の調子もあまり違和感なく、写真で見るより実物の方がずっと好印象だ。心配していた加工性も問題ないようで、伝統的な手法での曲げや切断、ニカワによる接着やセラックニスによる塗装も問題なく出来上がったとのこと。基本構造はハウザースタイルでネックもVジョイント。今回使ったKEBONY材の原材料はメイプル。表板は良質なスプルース。塗装はセラック。

肝心の音は…これもまったく違和感なかった。言われなければ、あるいは言われても、元の材料が軽く柔らかい針葉樹を加工して作った材とは思わない。横裏材違いで2台作り、比較しているわけではないので確定的なことは言えないが、加工品という言葉から連想するネガティブな感じはまったくなかった。中高音は反応よく立ち上り、低音のレゾナンスはそれほど低くはないが、6弦ローポジションのボリューム感も十分だった。

今回さらに驚いたのが、この1本のギターをアウラに関係している製作家6名が分業して作ったということ。サウンドホールからのぞき込むと、6名分の製作家ラベルが貼ってある。こんな楽器は初めてだ。この6名はいずれもスペイン流の伝統工法の製作家。また日頃からアウラを核にコミュニケーションもしている間柄で、言わばチーム・アウラという体制で臨んだことも奏功したようだ(6名の製作家がそれぞれ何を担当したかはここでは伏せておく)。

これでコストもグッと下がればいいことづくめだが、コストに関して現時点ではまだ「現状と同等程度」らしく、資源枯渇・熱帯雨林保護という観点では寄与するものの、実際の材料コストへの反映には、よりボリュームの大きい建材用途等での採用が更に進み、加工プラントもより量産対応が出来るようになる必要がありそうだ。また、今回の完成品は当面非売品扱いで、今後動画撮影等行い、より多くの人に周知させたいとのことだった。アウラ石川社長の発案で始まった今回のプロジェクト。今後の展開に期待したい。







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しばらく前に読んだ記事でマーティン社の社長が「近い将来、裏板だけではなく表板も4枚接ぎを受け入れなければならなくなるだろう」と言っていました。
木材枯渇は楽器業界の大きな悩みですね。
新しい木材に積極的に取り組むメーカーにはシンパシーを感じます。

Re: タイトルなし

みっちゃんさん>
いわゆるアコギとクラシックギターとでは市場規模は二桁くらい違うかもしませんが、悩みはいずこも一緒なのでしょうね。表板は横裏のローズ系に比べ、ひっ迫度合いはそれほどでもないとも言われますが、スプルース系に関しては、真正ドイツ松は本当に少なくなっているようです。イングルマン、シトカ等のスプルースは潤沢にあるのでしょうかね。クラシックギターの表板多数枚接ぎも一度見たことがあります。4枚だったかな。音の印象は記憶にありませんが、記憶にないということは別段驚くような差は無かったということかもしれません。

横裏は紙でもいける

横裏を紙で作ったものとそうでないものをブラインドで判定できるか?という企画ありましたが、ほとんどの人は判定出来なかったようです。横裏材はそれなりの物性を持った材料であればいけるのでしょう。

Re: 横裏は紙でもいける

そういうことは十分ありえると思います。
かのトーレスも様々なトライアルをする中で、紙(いわゆるボール紙)を使ったギターの試作しました。自分で実際にギターを抱えて弾き比べれば、おそらくわかるだろうと思いますが、ステージで弾かれ、それを離れた席で聴くというようなシチュエーションでは差は狭まると思います。
但し、他の要素もそうですが、純粋に音だけの要素ではなく、見た目や感触、全体の雰囲気、そうしたものも、演奏者の気分を上げ、メンタルな部分をサポートする要素として楽器の評価要素になるわけで、音さえよければ…ということにはならないのでしょうけどね。
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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
音楽とクラシックギターに目覚めて幾年月。道楽人生成れの果てのお粗末。

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