ムターのベートーヴェン
台風崩れの低気圧が通り抜け、きょうは暑さ復活。35度超えの残暑となった。さて週末金曜日の夜。冷やした緑茶で一服。机周りの片付けをしながらBGMにと、こんな盤を取り出した。

アンネ・ゾフィー・ムター(1963-)によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲ニ長調。クルト・マズア指揮ニューヨークフィルのバック。2002年のライヴ録音。同じくベートーヴェンのロマンス2曲も収録されている。手持ちの盤は十数年前、仕事で中国を何度か訪れたときに手に入れたもの。ジャケット帯に中文の記述があるのでそれと分かる。当時の中国は市中に海賊盤があふれていた時期。繁華な街の道々には海賊盤を売る露天商が並んでいた。この盤は大きなショッピングセンターに入っていた、見た目は立派なCDショップで買い求めたが、正規盤かどうかはあやしいところだ。
ムターはまだティーンエイジャーだった1979年にカラヤン&ベルリンフィルとこの曲を録音している。ブラームスやモーツァルトなど一連の録音を残した時期だ。それから四半世紀を経た再録音。当たり前だが音楽の様相はまったく異なる。第1楽章冒頭、オケの序奏が終わってムターのソロが入ってきた瞬間から濃厚なロマンチシズムが立ち上がる。たっぷりとしたボウイング、深く強いヴィブラート、大胆なテンポ・強弱の表情付け等々、今に至るムター・スタイルが提示される。例えば、最弱音のノン・ヴィブラートで聴き手の耳をひきつけたかと思うと、次の瞬間には一気に深いヴィブラートとを伴ったフォルテへ移行するといった、ディナーミクをより拡大する手法が随所に見られる(特に第2楽章で顕著)。おそらく実際のライヴではこれらの手法が効果的に聴衆の耳をひきつけ感動へを導くのだろうが、それを録音として(冷静に)聴くと、少々<くどさ>を感じる側面もある。マズア&ニューヨークフィルのバックもそうしたムターの解釈に沿ったもので、この演奏に関してはすべてがムター色だ。総じて、40代を目前に人も音楽も成熟し、ティーンエイジの頃とは異なる表現を身に付けたムターその人を聴く盤だ。
この盤の音源。第1楽章。
小澤&ボストンとの日本公演@サントリーホール1989
小澤&ベルリンフィルとの第1楽章冒頭。2008年
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