福田進一「19世紀ギター・デビュー」
週末土曜日。野暮用続きであたふたと終了。夕方近くになって時間が出来たので音盤棚をサーチ。久々にこんな盤を取り出した。

本邦ギター界の第一人者といってよい福田進一(1955-)が19世紀ギターで古典ギター黄金期の作品を取り上げた盤。日本コロンビアの廉価盤クレスト1000シリーズ中の一枚。1994年、埼玉県秩父ミューズパークでの録音。収録曲は以下の通り。
ナポレオン・コスト(1805-1883)
夢 作品53の1
フェルナンド・ソル(1778-1839)
エチュード イ長調 作品6の12
エチュード ハ長調 作品29の17
エチュード ロ短調 作品35の22
エチュード ホ長調 作品31の23
モーツァルト「魔笛」の主題による変奏曲 作品9
ワルツ ホ長調 作品32の2
ディオニソス・アグアド(1784-1849)
華麗なロンド 作品2の2
ナポレオン・コスト(1805-1883)
交響的幻想曲よりアンダンテ 作品38の14
スペインの歌「カチューチャ」によるカプリス 作品13
ヨーゼフ・カスパル・メルツ(1806-1856)
ハンガリー風幻想曲 作品65の1
夕べの歌~吟遊詩人の調べ、作品13より
クラシックギター界で、いわゆる19世紀ギターがプロアマ問わず取り上げられだしたのはいつ頃だろうか。ぼく自身は80~90年代の20年近くギターとは疎遠な時期があったので定かでないのだが、この盤が「19世紀デヴュー」と称されてリリースされたことからみても、おそらく90年代に入ったあたりからではないだろうか。ぼくがギターにカムバックした2000年代初頭にはすでにインターネットでも盛んに情報が行き交っていた。もちろんギターを弾き初めた70年代初頭から、例えば当時の楽器の代表格ともいえるルネ・ラコートの名前と姿は見知っていたが、まさか自分がオリジナルの19世紀ギターを手にしようとは、ギターを再開した2000年代初頭にも思ってもみなかった。
19世紀ギターは20世紀以降のモダン楽器とは音色、発音、手にした感触、いずれも大きく異なる。ギター弾きにはお馴染みのソル、ジュリアーニ、カルリをはじめ、多くの19世紀のギター作品が当時弾かれた、そのままの姿を再現しようと思うとき、必然的に楽器も当時のスタイルのものを手にしたくなる。一般のクラシック、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ショパンも、現代の楽器と当時の楽器とでまったく趣きがことなるのと同じだ。今となっては、どちらが正統ということも意味がないかもしれないが、一度はオリジナルの形を見知っておくべきだろう。
さてこのアルバム。名器ラコートのオリジナル楽器を使い、美しいアコースティックの秩父ミューズパークという絶好の環境を得ているのだが、演奏そのものに古典的な薫りがいささか乏しいように感じる。器用かつぬかりのない技巧で鮮やかに弾いてはいるのだが、その器用さがゆえに情緒的表現が前に出てしまい、古典的な構成感や清涼さが後退する。収録されている曲のうち、ソルやアグアドよりはロマン派色の濃いメルツやコストとの相性がいいと感じるのもその辺りに起因するのかもしれない。 この盤を取り上げておきながら、ネガティブなことを書くのは失礼千万であるのだが、実はそんな印象もあって、その後多くの盤をリリースしている彼の演奏をあまり熱心に聴く気にならなくなってしまった。もっとも今から四半世紀前の演奏。おそらく福田氏自身、今また同じような企画に取り組むとすれば、また違った演奏になるかもしれない。
手持ちの盤からアップした。
F・ソル「モーツァルトの主題による変奏曲」
ナポレオン・コスト「スペインの歌によるカプリス」
福田進一といえば…今週始め9月7日(月)からインターネットラジオ局OTTAVAにて福田氏がパーソナリティを務めるラジオ番組「6弦上のアリア」がスタートしたとのこと。毎週月曜22時からの放送だそうだ。
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