突然ですが…あぁ中森明菜

『お前らなあ、今は若干、若干な、知的な志向があってクラシックなんか聴いているかもしれんが、そのうち歌謡曲がしみじみいいなあと思うようになるんだ。』…高校1年のとき、古典のY教諭がそう言ったのを覚えている。その頃ちょうどクラシックに興味を持ち出していたぼくには、このオヤジ何言ってんだよ、くらいの気分だった。以降20代・30代とかなりガチガチのクラシックマニアであったが、ここに及んで、その教師の予言まさに的中せりの状況である。で、今夜は、中森明菜のカヴァーアルバム『歌姫』をCDプレイヤーにセットした。これがしみじみといいのだ。


中森明菜の傑作 『歌姫』


彼女がアイドルとして人気絶頂を誇った80年代の活躍をぼくはほとんど知らない。彼女の歌を聴くようになったのは、例の自殺未遂事件があって、そして人気のかげりもはっきりしてきた90年代後半からだ。このアルバムは1994年のリリースだから、彼女にとっても微妙な時期のアルバムだ。収録曲は以下の通り、70年代から80年代初頭の歌謡名曲が並んでいる。どの曲も美しく、そしてはかない。

1. ダンスはうまく踊れない
2. 愛染橋
3. 片想い
4. 思春期
5. 逢いたくて逢いたくて
6. 終着駅
7. 魔法の鏡
8. 生きがい
9. 私は風

彼女の声域は女性としては低い。が、歌声を聴いているとそうは感じない。確かに音域は低いのだろうが、声が透明でクリアなのだ。低い=ハスキーではない。ある程度整ったオーディオ装置で聴くと、そのことが一層よく分かる。このアルバムでは彼女のその歌声がどの曲にもぴたりと合っている。何より歌いまわしがうまい。ささやくような歌い方でも、声がよくコントロールされ、曲ごとのニュアンスは多彩で、説得力がある。
そして、このアルバムが傑作であることを更に決定的にしているのが、全編を通して光る千住明のアレンジだ。管弦楽を駆使した重厚でシンフォニックな扱い、ときにホルンやオーボエを効果的に使い、中森明菜の歌声と曲のもつイメージを一層効果的に引き出している。特に、三木たかし作曲の名曲『思秋期』の見事なアレンジは圧巻だ。このアルバムは、昭和の名曲・中森明菜の名唱・千住明の名編曲、この三位一体が作り出した名盤だと思う。

このアルバム以降、彼女は何枚かのカバーアルバムを出している。それらをぼくは聴いていない。何だか、この1枚で十分なのだ。最近しみじみと聴ける歌謡曲、ポップスがないとお嘆きの同世代諸兄諸姉よ、このアルバムを聴きましょう。アイドルとして競い合って、その後も芸能界の王道を歩く松田聖子、一方あの事件以降パッとしない中森明菜。やはり破滅型の人生なのかな。このアルバムを聴いていいると、そんな彼女の有様がそのまま見えてくるようだ。

さあ、この『難破船』を聴いて、最後に会場のみんなと一緒に大声で叫ぼう…『明菜ちゃ~ん、頑張って~!』



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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