マヌエル・ポンセ:ソナタ第3番



週末日曜日。野暮用あって出たり入ったりの一日。日暮れ前に少し時間があったので、年頭から続く「三番シバリ」を意識しつつ、この盤を取り出した。


202101_Kulikova_Ponce_Sonata.jpg


これまで何度か記事に取り上げているイリーナ・クリコヴァのギター。ナクソスから何枚か出ている彼女のアルバム中の一枚。確かこの盤が一番最初にリリースされたはずだ。収録曲は以下の通り。20世紀になってから書かれた充実した近代作品が楽しめる。

 ・ポンセ/ソナタ第3番(1927)
 ・タンスマン/スクリャービンの主題による変奏曲(1972)
 ・ポンセ/子午線のソナチネ(1930)
 ・ブローウェル/ジャンゴ・ラインハルトの主題による変奏曲(1984)
 ・ホセ/ソナタ(1933)

まずは本格的な近代作品を並べた姿勢に感服する。ポンセやタンスマンは、少し音楽的感度の高いギター弾きに取っては、好きな作曲家の双璧ではないだろうか。実際この盤に収録されているポンセの2曲とタンスマンの曲だけでもこの盤の価値がある。クリコヴァの演奏はいずれの曲も完璧な技巧とよく練られた解釈で、これらの作品が持つ和声の面白さや構成や展開の妙が存分に楽しめる。

先程から三番シバリのソナタ第3番を聴いている。この曲はポンセの他ソナタように副題がなく、彼自身のイメージがもっとも明確に出ている曲かもしれない。ラテン系らしいフレンドリーなメロディーながら明るい太陽のラテンからは遠い。どこかほの暗く、抒情に満ちている。第2楽章:シャンソンは憂いと哀愁を湛え、とりわけ美しい。以前も記事したセゴビアの演奏もこの曲のオリジンとして素晴らしい。セゴビアで聴くとその音色もあって何かノスタルジックなイメージが沸いてくるが、この盤で聴くとより新しい音楽を聴いているような気分になる。録音の状態や音の録り方も曲が与えるイメージに随分と影響する。

クリコヴァはチェリストであった母親から音楽の手ほどきを受けたことも影響してか、単音のメロディーの歌い方がインスピレーションに満ちている。加えて愛器サイモン・マーティーから繰り出される音は広いダイナミクスと浸透力がある。トータルとして現代的なギター演奏の典型であり、一つの頂点ではないかと感じる。YOUTUBEには相当数の彼女の演奏があるが、いずれも音質に問題が多い。オリジナルのCDを聴くことを薦めたい。お手軽、便利なYOUTUBEではあるが、それですべてを間に合わせるのは、演奏の本来の姿を見落としかねない。


手持ちの盤からアップした。ポンセのソナタ第3番全3楽章。


同曲の美しい第2楽章chanson


多くの国際コンクールを制しているメキシコのパブロ・ガリバイによる演奏。ソナタ第3番全3楽章。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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