ベートーヴェン三重協奏曲Op.56
週半ばの水曜日。きのうは在宅、きょうは出勤、あすはまた在宅…どうも落ち着かないなあと思いながらも、暦だけはしっかり進んで一月も下旬。まあ、日々淡々とやっていくべし…かな。さて、変わらず令和「三」シバリの音盤タイム。きょうはこの「三」を取り出した。

ベートーヴェンのピアノ・ヴァイオリン・チェロのための三重協奏曲ハ長調作品56。ジャック・ルヴィエ(p)、ジャン・ジャック=カントロフ(Vn)、藤原真理(Vc)、エマニュエル・クリヴィヌ指揮オランダ室内管弦楽団による演奏。1985年録音。手持ちの盤はお馴染み日本コロンビアの廉価盤シリーズ「クレスト1000」の一枚。
この曲は多くの同輩同様、70年代のオイストラフ・リヒテル・ロストロポービッチのカラヤン盤で出会った。おそらくあの盤によって、この曲自体の認知度も大きく上がったのではないだろうか。ぼくが手に入れたときのセル指揮クリーヴランド管とのブラームス<ドッペル>がカップリングされた2枚組みは、曲そのもの、そして協奏曲の素晴らしさ、オーケストラとソロの関係性、そういったものを初めて気付かせてくれた盤でもあって思いで深い愛聴盤の一つだ。そんなことでこの曲自体もお気に入りの一曲となり、カラヤンの新旧盤、フリッチャイ盤、コレギウムアウレウム盤、そしてきょう取り出した盤と、数種が手元にある。
この曲はベートーヴェンの作品の中にあってはいささか評価が低い。凡作とまで言われることすらある。確かに同時期に書かれたピアノソナタ<熱情>、交響曲<英雄>など比べると、ベートーヴェンらしさの根源とでもいうべき劇的な展開や意表をつく和声などには乏しい。しかし、どこをどう取っても古典派らしい構成感と和声感に満ちた充実した作品だ。ロマン派にまだ足を踏み入れない頃の古典的作品としてみれば、至極真っ当で充実した作品と言える。加えて貴重なのは、単独のチェロ協奏曲を残していないベートーヴェンにとって唯一チェロと管弦楽曲の<協奏>が聴ける曲でもあるということだ。
曲冒頭、チェロとコントラバスによる静かな主題提示で印象的に始まる。ハ長調の伸びやかな調性にのって各ソロ楽器がいきいきとフレーズを交わし、実に気持ちのいい展開が続く。第2楽章は弦楽群の序奏に促されチェロのソロで始まる。こんなフレーズを聴くとチェロ協奏曲を残していてくれたらと思わずにはいられない。第3楽章はアラ・ポラッカとなって、沸き立つような躍動感にあふれる。途中短調に転じて交わされるモチーフのやり取りはこの楽章の聴きどころだ。
録音された1985年からすでに35年。協演者らにとっては若き日の記録ということになるだろうか。藤原真理が1978年のチェイコフスキーコンクールで第2位になってデビューを飾り充実の時期。カントロフはやや線が細い印象だが、むしろ<力の協演>にならず好感。先のカラヤン盤とは異なる室内楽的アプローチで、エマニュエル・クリヴィヌ指揮オランダ室のバックも含めて、この曲の魅力を十全に伝えてくれる名演だ。
手持ちの盤からアップ。「alla Polacca」好きのぼくの嗜好を反映して第3楽章を。
ヨーヨーマ、パールマン、バレンボイム&ベルリンフィルによる豪華な演奏@1995(36分過ぎまで)。 1stVnトップに安永氏。第2楽章は18分過ぎから。第3楽章は23分50秒から。28分50秒過ぎからのやり取りはいつ聴いても心おどる。37分過ぎからは<合唱幻想曲>が始まる。
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