ミケランジェリのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番ハ短調



大寒は過ぎたものの、今しばらくは寒さのピーク。一方で夕方の日足はのび、僅かながら春の兆しも感じる。関東地方はこの週末、本州南岸を通過する低気圧の影響で天気が崩れ、一部で雪も舞った。冬型が安定しなくなるのもこれから春先にかけての特徴だ。 さて、気付けば一月も末。変わらず令和三年にちなみ「三」シバリの音盤タイム。今夜はこんな盤を取り出した。


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カルロ・マリア・ジュリーニ(1914-2005)指揮ウィーン交響楽団をバックにミケランジェリ(1920-1995)がベートーヴェンの3番と5番の協奏曲を弾いた盤。1979年テレビ収録用のライブ録音。手持ちの盤は十数年前に出た廉価盤。カルロス・クライバーと全集を作る計画が頓挫し、ミケランジェリと付き合いの長いジュリーニがあとを受け継いだとものだそうだ。しかも第3番についてミケランジェリは発売を渋っていたという。40年も経った今となっては、どうでもいい話だが…

第3番はベートーヴェンの5つのピアノ協奏曲中では4番と並んで、もっとも美しい歌にあふれた曲だ。第1楽章のハ短調主題が静かに始まる。ジュリーニは晩年かなり遅いテンポをとるようになったが、この盤が録られた頃はまださほどではなく、中庸のいい感じのテンポだ。オケの音はどっしりとしていて、テヌートを効かせたフレージングで歌っていくが、イタリア人気質というべきか、音楽は重くなく、ところどころのアクセントや強弱のギアチェンジもうまい。続いて決然と入ってくるミケランジェリのピアノ。ぼくはピアノの音色感には鈍感なのだが、この盤で聴くミケランジェリのタッチは素晴らしい。メゾピアノ以下の音量での音のコントロールが抜群だし、レガートとスタカートの切り替えもまったくスムースで効果的だ。

録音場所は明記されていないが、ウィーンのゾフィエンザールかムジークフェラインだろうか。オケの特に弦楽器の響きが美しく録られている。木管がもう少しブレンドしてほしいとことだが、ライブゆえのマイクセッティングの制約もあったのだろう。曲は第2、第3楽章とジュリーニの指揮のもと、ややゆったりとしかし緊張感をもって進む。ミケランジェリのピアノもエキセントリックな解釈はなく、ジュリーニとウィーン響のバックにのって終始余裕のある響きで、完璧かつ丁寧な演奏を繰り広げる。特に第3楽章は室内楽的ともいうべき精緻さで、この曲の持つ美しいメロディーが際立つ。最後のコーダはハ長調プレストになって駆け抜けるが、その際もオケ、ピアノとも響きのバランスを失わず美しい演奏だ。
このミケランジェリやジュリーニ、あるいはポリーニやチェリビダッケなど、陽気で明るいイタリア人というイメージからは想像しがたい精緻で考え抜いた演奏をする連中もいるものだと、彼の国イタリアの懐深さに感心する演奏でもある。


この盤の音源。第1楽章。



この盤と同じコンビ。ミケランジェリ・ジュリニーニ&ウィーン響による全楽章。CDの音源となったテレビ放映時のライヴかどうかは定かでない。会場はムジークフェラインのようだ。映像、音質とも冴えないのが残念。。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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