懐かしの茶位ギター



つい先日ギターを一本買った。もう楽器を増やすのはやめようと思っていたのだが、何となくピンとくるものがあったのと、遊びで買える価格だったこともあって、つい…


202102_Chai_1.jpg

202102_Chai_2.jpg


手に入れたのは茶位幸信1974年作。表板スプルース。横裏板インディアンローズウッド。指板は黒檀。弦長650㎜。ペグは60~70年代の楽器によくある39㎜ピッチ。塗装は薄塗りのラッカー。当時の定価8万円のモデル。ちょうど私が大学に入学した年のもので、サークルでもこのクラスの茶位ギターを何人も使っていた懐かしいブランドだ。大学1年の年末、サークル内の発表会でタレガのアラビア風奇想曲を弾くことになり、高校時代から使っていた松岡ギターでは冴えないので、同期の仲間から茶位ギター借りて演奏した思い出もある。先日、大阪・茨木六弦堂にこのギターが出ているのを見つけ、そんな懐かしさもあって店主南里さんに連絡し送ってもらった。 1974年当時といえば前年のオイルショック以降のインフレが激しい時期で、物価も給料も年率20パーセント以上上昇していた。当時8万円の定価は大卒初任給より少し高いくらいに相当する。物価水準、使用材料等からみると現在の30万クラスの楽器ということになるだろうか。

茶位幸信氏は元々ヴァイオリン等の弦楽器を製作していたのだが、60年代からのギターブームもあって次第にギター製作へシフト、特に70年から80年代には創業者の茶位幸信氏と何名かの職工とが家内制手工業レベルの小工場でかなりの数を作っていた。完全な個人製作家とは少し業態を異にし、学生にも手の届く価格のスチューデントモデルに位置付けられるものも製作していた。ギターデュオのゴンチチが使っていることでも知られている。製作本数も多いので現在でも中古の出物はしばしば見かける。

送られてきた個体は製作から40数年を経ているにしてはキズ少なく、ネックや指板、ボディーや表板、塗装の状態もおおむね良好で、どうやら前所有者はあまり弾いておらず、かつ保存状態もよかったようだ。肝心の音は実はあまり期待していなかったのだが、予想を裏切る好印象。高音はやや硬質ながら張りのある音で良く鳴り、低音はやや腰高(レゾナンスはG♯~A)ながら音量や伸びも十分。全体のバランスも良好だ。到着した直後は、あらゆる音域での音の均一性という点ではやや難があるかなと感じていたのだが、数日弾いているうちに楽器が永い眠りから目覚めてきたのか、全域でスムースに発音するようになった。音にもう一段品位が欲しい感じだが、その辺がこのクラスの楽器としての限界だろうか。仔細に点検するといくつか手を入れたい箇所もあるが、それにしてもおおよそ不満のない音で、十分いい買い物だったと自己満足している。


手に入れた茶位ギターの音の確認。フェルナンド・ソルの練習曲作品60の4(下の楽譜)。単音のやさしい練習曲ということになっているが、ハ短調の調性感と単音ながら豊かな和声を感じさせる佳曲だ。例によって楽譜を広げてさっと弾いただけなので、肝心なところでミス散見。機会があればあらためて…
Sor_Op60-4.jpg
楽譜はこちら




■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

No title

 ギターって優雅な感じですね。ヘッドホンのご紹介ありがとうございました。情けないのですが、どうも耳が弱く、mp3くらいの音質で、ラジカセで小さい音で聞いていないと耳の調子が悪くなってしまうようなのです。先週などは、熱いお風呂に入って風呂場で失神、転倒、もう少しでさようならという感じだったのです。首、腕、腰、などキズとあざになりました。凄い音だったようですが、私は失神していて何も分からなかったです。かなり痛かったけれど病院にも行かないで静かにしていました。
 家事や子どもや孫のお手伝いは、何とかしていました。ボケ防止に一日15分くらい、電子ピアノでブルクミュラーやバッハのインヴェンションなどを弾いています。FM放送でクラシック音楽がない時用にラジカセで聞けるように下記のような曲をmp3ファイルにしています。
「昼間用」
ハイドン:交響曲全集:ドラティ&フィルハーモニア・フンガリカ
ハイドン:弦楽四重奏曲全集:コダーイ・クワルテット
モーツァルト:交響曲第31~36、38、39、40、41番:ペーター・マーク&パドヴァ・ヴェネート管弦楽団
モーツァルト:弦楽四重奏曲:バリリ四重奏団
ベートーヴェン: 交響曲全集:ペーター・マーク:パドヴァ=ヴェネト室内管弦楽団
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集:バリリ四重奏団
カーメン・ドラゴンの芸術
アメリカングラフィティ集:ニューサウンズインブラス
ジャパニーズグラフィティ集:ニューサウンズインブラス
「夜用」
ヴィヴァルディ:ソナタ&協奏曲集:クラウディオ・シモーネ:ヴェネツィア合奏団
バッハ:チェロ組曲:ビルスマ
バッハ:無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ:シェリング
弦楽ソナタ集:ベネデク/ハンガリアン・ヴィルトゥオージ/ブザ/ジェペッシ ロッシーニ

Re: No title

osaka59さん コメントありがとうございます。
鉄壁のmp3ライブラリーですね。ハイドンの交響曲、カルテット全曲は必須!も同感。 私もいずれ来る隠遁生活のために、手持ち音源をポータブルプレイヤーに入れ、自分の体と鞄一つでどこへでも行ける準備をしたいと思っていますが、未だ着手していません。

ほぼ同じ…

年代・仕様の茶位を所有しています🎵
あげたつもりで貸していたら、ワインとともに帰って来ました🍷
予想以上に良い楽器ですよ、あの頃のサントスヘッドの茶位は…その後◎堀ギターと関わって大量に作ることで…😖⤵️

Re: ほぼ同じ…

そう!…予想を大きく上回る出来の良さで驚きました。
やっぱり数を追って、楽器そのものはいいことはないですよね。残念…

そういえば、Mazaさんと再会してからちょうど十年経ちました。
震災直後の週末に初めて川越プチに行ったのがついこの間のことのようです。

もうそんなに…

なりますか?
最近、メキシコの製作家 ジェラルド エスコベードの2018年のラ レオーナのコピーを入手しました❗️
ラ レオーナは中野潤さんに続き二本目、やはりトーレスの中でもレオーナは特殊(特別)な楽器です(^-^)/

Re: もうそんなに…

そうですよ、十年…つい昨日のことです(^^
ところでそのレプリカはこちかから?
https://www.zavaletas-guitarras.com/
以下は2015年製ですね。
https://www.zavaletas-guitarras.com/guitar-classical/2015-gerardo-escobedo-hernandez-model-torres

いいえ

違います❗️
あの楽器は通常のトーレスのコピーです。レオーナは装飾も少ない地味な見た目の楽器で、裏横は本来シープレス(あの楽器はバーズアイメープル)です❗️
某オークションで落札しました。出品者があまりクラシックギターに詳しくないようでかなり安価(定価の1/2以下)で落札しました🎵
写真はmixiに載せました❗️
本来の仕様と違うのは横裏の材質、トルナボスの材質・取り付け(本来は裏板にサウンドポストで固定)、ブリッジがリュート式でなくサドルが追加されていること…約75%のコピーかな🎵

Re: いいえ

なるほど、某オークションでね…
そう、あのサイトに出ていたのは、レオーナコピーではないですね。
最近あらためて思いますが、結局のところ、楽器は弾き手の気分が上がるかどうかがポイントだなあと。あまり結果を問われないアマチュアの場合は特に。
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
05 | 2023/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
月別アーカイブ
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)