カラヤン&VPOの「惑星」
先回の記事に英デッカ録音のカラヤン&VPO盤を聴いたことで思い出し、今夜はしばらく聴いていなかったこの盤を取り出した。

お馴染み、グスターヴ・ホルスト作曲の組曲「惑星」。カラヤン指揮ウィーンフィルによる1961年録音。この時期に英デッカに録音されたカラヤン&ウィーンフィルによる一連の録音中の一枚。手持ちの盤はぼくら世代にはお馴染み、1973年のカラヤン&ベルリンフィル来日に合せてキングから発売された廉価盤シリーズのもの。このときの来日公演が行われた1973年秋、ぼくは浪人生という身分で指をくわえてそのニュースを聞いていた記憶がある。
このカラヤン&ウィーンフィル盤以前から、ストコフスキー盤、サージェント盤、ボールト盤など、「惑星」の録音はあるにはあった。しかし、この曲の持つゴージャスなオーケストレーションや曲想のポピュラリティーを広く知らしめたのは、間違いなくこの盤が最初だった。ウィーンフィルの輝かしい音色、金管群の咆哮と炸裂する打楽器群、そしてそれらを見事にとらえた英デッカの録音…そうした要素が集合してこの名盤は生まれた。
60年代初頭のカラヤン&ウィーンフィルによる録音は、いずれも同時期のベルリンフィルとの独グラモフォン録音とはまったく異なるトーンバランスだ。カラヤンの特質としてよく言われる、華麗なオーケストラサウンドという言葉は、手兵ベルリンフィルよりもウィーンフィルとのデッカ録音の方がより相応しく感じる。この盤の演奏でも、艶やかな弦楽群、輝かしい金管群、思い切りのいい打楽器群等、半世紀以上前の録音であることが信じられないほどリアルだ。加えて、ベルリンフィルでは自らのコントロール化におき、録音セッションでもテイクを重ねて完璧を期そうとするカラヤンが、このウィーンフィルとの録音では、ほとんどワンテイクではないかと思わせるような流れの良さと勢いを感じる。ところどころアンサンブルや音程のの乱れ、楽譜上のミステイク等あるのは事実だが、そうした些細なことに拘泥せずにライヴを繰り広げる趣きがある。
冒頭の<火星>での力感あふれる推進力、<木星>での演出の巧みさなどは言うまでもないが、<金星>や<海王星>での官能的な美しさも比類がない。神秘的な<土星>ではコントラバスの深い低音が見事に音楽を支える。英デッカの録音は中高音域のメリハリばかりでないことの証左だ。<天王星>での分厚い金管群とダイナミックな打楽器群も圧巻。70年代以降、メータ、ショルティ、バーンスタン、プレヴィンらが競うようにこの曲をリリース、さらに冨田勲のシンセサイザー版、近年の木星歌唱版まで含めても、このカラヤン&ウィーンフィル盤の価値はいささかも変わらない。
この盤の音源。
同曲のベルリンフィルとの演奏。1981年録音 独グラモフォン
ウィーンフィルとの英デッカ盤とはトーンバランスがまったく異なる。
2015年のPROMSでのライヴ。フィンランド生まれのスザンナ・マルッキ指揮BBC交響楽団。
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