群馬交響楽団第566定期演奏会



先週末土曜日は、ほぼ一年ぶりに群馬交響楽団(群響:グンキョウ)の演奏会へ足を運んだ。


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一昨年2019年秋に新しい本拠地となったホールが完成。いよいよ2020年度は新ホールでの演奏が本格化するのを楽しみにしていたのだが、その矢先のコロナ禍。多くの音楽団体同様、群馬交響楽団も活動休止が続くことになった。創立75周年を記念しての海外演奏旅行の予定も頓挫。どうなるものかと案じていたが、昨年秋から変則的ながら定期演奏会を再開。今年になってようやく正常化してきた。今回は2020年度シーズン最後の定期として以下のプログラムで開催された。

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シューマン/《マンフレッド》序曲 作品115(マーラー編曲版)
マーラー/交響曲第6番イ短調「悲劇的」
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大井剛史指揮・群馬交響楽団
2021年3月20日(土)18:45~ 高崎芸術劇場
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大曲マーラーの第6交響曲をメインに据えたシーズン最後を飾るに相応しいプログラム。マーラーの前にシューマンのマンフレッド序曲、それもマーラー編曲版の日本初演という中々凝った演出で思わずニヤリとする。指揮者の大井剛史氏の指揮に接するのは今回が初めて。2014年から東京佼成ウインドオーケストラの正指揮者を務めるほか、幅広いジャンルで活躍している由。保守本流とも言うべき独墺ロマン派系譜の名曲をどう料理するのか楽しみにしながら会場に向かった。

万全のコロナ感染対策が施された会場運営のもと観客数制限も無くなり、会場はほぼ9割の入り。相変わらず地元ファンに根強く支えられていることを実感する。例によって音楽評論家:渡辺和彦氏のプレトークがあったのち、定刻18時45分に団員が登場。客電も落ちてチューニングが始まった。

「マンフレッド序曲」はシューマンの交響曲以外の管弦楽曲の中ではもっともポピュラーな曲。手持ちの盤でもまたコンサートでも何度か聴いていて馴染みのある曲だ。そしてそのマーラー編曲版や如何に。プレトークでの案内を聞いて心の準備をしておいたが、冒頭のシンバルの一撃にやはり驚いた。マーラーは後期ロマン派視点からいくつかの改編を試みたのだろうが、冒頭にシャーンというシンバルを入れる必要性がどんな考えから出てくるのか、ぼくのような現代の凡人には分からない。その後はこれといった違和感はなく曲が進む。大井氏の解釈は中々ドラマティック。速めのテンポながら大きなディナーミクのうねりが盛り込まれ、音楽は非常にダイナミックに動く。対向配置の弦楽群の呼応するパッセージも明確な対比がつけられ音楽が意欲的に前に進み、素晴らしい効果を上げていた。

休憩をはさんでメインプログラムのマーラー第6交響曲。群響はこの曲を2003年に高関健氏と、また2014年には沼尻竜典氏とそれぞれ演奏している。ぼくは2003年のとき聴いた記憶がある。地方オケでマーラーが取り上げられることは今や珍しくないが、第6番がこれ程の頻度で聴けるのは中々貴重かもしれない。
80分を超える大曲第6番。ここでも大井氏の指揮ぶりは一貫している。長丁場のこの曲に仕組まれた音楽的要素を細大漏らさずピックアップし、速めのテンポの中にそれを埋め込んでいく。全身のアクション、各パートへの指示…一瞬たりとも緊張が途切れることなく、聴いているこちら側も楽章の合間にふーっと大きく息を付きたくなるほどだ。この曲で問題となる第2楽章と第3楽章の扱いは第2楽章アンダンテ、第3楽章スケルツォとし、近年の標準とも言える順番。拍子こそ違うもののスケルツォが第1楽章冒頭と似た音響で始まることもあって、この順序の方が落ち着いて聴けるように思う。 実は新しい群響の本拠地であるホールが出来てから過去2回は3階席で聴いたのだが、他の席の音響も確認したいと思い、この日は1階中央やや右寄りの席を取った。3階席でも同様だったが、耳元に届く音響は総じて良好。もう少し残響があっていいかなと感じるが、過多になって細部が曖昧になるよりはいいのではないかと思う。そんなホールの音響も手伝って、大井氏の指示する各パートの出入り、主役・脇役の描き分けなどが明快に聴く側に伝わってくる。時々ベルアップして熱演する管楽器群、八面六臂の打楽器群の活躍、終楽章終盤でのハンマー打撃も決まり、大団円の幕となった。

シーズン大トリを飾る大曲、大井氏の意を尽くした解釈、そして群響の熱演に大満足。コロナ禍の今後の影響未だ不透明ながら、来月からの2021年シーズンを楽しみに待ちたいと思いつつ、一年ぶりの演奏会の余韻が感じながら会場をあとにした。


アバド&ルツェルン祝祭管による2006年のライヴ。ルツェルン祝祭管はザビーネ・マイヤー(CL)、ナターリヤ・グートマン(Vc)他豪華メンバー。第4楽章、例のハンマー一撃は1時間5分50秒過ぎと1時間10分30秒過ぎ。中間楽章は2003年にマーラー協会が宣言した通り、第2楽章アンダンテ、第3楽章スケルツォの順。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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