リヒテルのシューベルトD960



週末日曜日。あれこれあって少々物憂い一日。夕方近くになって気を取り直し、こんな盤を取り出した。


202104_Richter_D960.jpg


スヴャトスラフ・リヒテル(1915-1997)の弾くシューベルトのピアノソナタ変ロ長調D960。1972年ザルツブルグでの録音。リヒテル最初の平均律クラヴィーア曲集と同時期に録られたもので、この曲を語るときには必ずといってよいほど引き合いに出される名演だ。手持ちの盤はレコードのレーベル印刷に「Shinsekai」の表記があるメロディア原盤の国内盤。随分前に近所のリサイクルショップのジャンク箱から100円で捕獲した。ライナーノーツは失われていたが盤面はほとんどミント状態だった。この演奏を最初に聴いたのは学生時代の70年代半ば。それまでピアノ曲をほとんど聴いていなかったが、このシューベルト、そして平均律で初めてピアノ独奏曲というものを聴くようになった。

シューベルトの、あるいはロマン派ピアノソナタの傑作中の傑作。多くのピアニストが必ずといっていいほど取り組む曲でもある。演奏時間はしばしば40分を超える。特にこのリヒテルの演奏は第1楽章だけでレコードA面全部を使い25分を要している。そしてこれほどテンポの遅い演奏は当時はもちろん現在でも少ない(手元にあるアファナシエフは28分を要しているが…)。先を急ぐことなく悠々と奏される第1楽章。リヒテルの演奏は求心的でありながら押し付けがましい精神論や厳しさのようなものとは対極で、すべてが自然で穏やかに弾き進められる。それでいて弛緩するところなく間然とした品位の高さを併せもつ。第2楽章アンダンテ・ソステヌートも平和な美しさと程よい緊張に満ちている。第3、第4楽章は転じてリズミカルなフレーズが軽やかに奏されるが、騒がしいお祭り気分とは無縁で清廉な明るさにあふれる。リヒテルの前半2つの楽章とは対照的に速めのテンポと軽快なタッチで、この曲が無用に重苦しい曲ではないことを証明している。

今夜久しぶりに針を降ろしてみたが、緊張感と同時に安息に満ちた45分があっという間に過ぎた。けだし名曲。


この盤の音源。


ジェローム・ローズによる演奏。


福間洸太朗によるレクチャー



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