ラトル&VPOの「運命」



ここ数日、台風や前線の影響あって雨まじりの日が続く。気付けば八月も半ば。暑さはピークアウトしたように感じるが、季節感を感じる余裕もなくコロナ禍は続く。さて週末日曜日の午後。部屋の片付けをしながら、久々にこんな盤を取り出した。


201208_Rattle_VPO_LVB.jpg


サイモン・ラトル(1955-)とウィーンフィルによるベートーヴェンの交響曲全集。2002年4月から5月にかけ、ウィーンフィルの本拠地ムジークフェラインでライヴ録音されたもの。元々EMIから出ていたが、EMI身売りに伴い、ジャケットにはWARNER CLASSICSのロゴが入っている。このラトル&VPO盤はライヴとして短期間にまとめて録られたこと、またベーレンライター版が使われたことなどが話題になった盤で、例の石原俊著のオーディオ本でも同著発売当時(2005年)のベートーヴェン演奏の代表として、またオーディオ的リファレンスとして取り上げられていたもので、ムジークフェラインの音響を生かした高音質でも評価されていた盤だ。
またまた数年前、ヨドバシアキバのタワーレコードで叩き売られていたのを見つけ、値段はともかく、日頃古めの録音ばかり聴いていて、たまには時流にのるものいいかなあと思っていたこともあって手に入れた。手元にあるベートーヴェン交響曲全集はかるく十種を超えるが、もっとも新しいのがジンマン&チューリッヒトーンハレ盤(1997-98年録音)、高関健&群馬交響楽団盤(1995年録音)あたりで、21世紀の録音はこの盤が唯一だ。きょうはこの中から第5番ハ短調「運命」を取り出した。

この全集はこれまでにひと通り全曲を聴いたが、ひと言でいえば、やはり面白い演奏だ。リリース当時、賛否両論大いに物議をかもしたのもうなづける。ウィーンフィルは極上の音響、ライヴのハンディキャップを感じさえない録音と仕上がり、そして何よりラトルの眼力があちこちで新鮮な響きをもたらし、飽きさせない。第5番も70年代までの重厚長大路線の演奏がデフォルトのぼくら世代には、この曲にこんなフレーズや仕掛けが潜んでいたのかと、感心することしきりだ。巨匠時代の重厚長大路線をごく大雑把に言えば、スコアを遠くから俯瞰し、全体像としての構成を重視する傾向が強い。それに対してこのラトル盤はスコアを手元ぎりぎりまで引き寄せ、書かれている音符の隅々にフォーカスし、明解な音にして提示する。慣れ親しんだ、あるいはいささか手垢のついた予定調和的な先行きが見える演奏の対極として、21世紀のリファレンスの一つと言っていい演奏だ。


この盤の音源。第5番第1楽章。


第5番全4楽章。2001年ウィーンフィルとの来日公演@サントリーホール



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