セゴビア・コレクション第1集「バッハ作品集」
飛び石連休の一週間が終わり、もう九月も終わり…なんだかなあと溜息を一つ。週末土曜日のきょうもチョコチョコ野暮用で日が暮れた。今月いっぱいでこのブログを閉じようかどうしようか、などと思案しつつ音盤棚をサーチ。久しぶりにこんな盤を取り出した。

シャコンヌが収められているLP二つは、70年代ビクターMCA盤と60年代にテイチクから出ていたDECCA盤。

バブル期80年代終盤に当時のワーナーパイオニアから出たセゴビア・コレクション全17巻中の第1集。「バッハ作品集」と題された一枚。収録曲は以下の通り。
リュートのための三つの小品
アルマンド BWV996より
サラバンド BWV997より
ジーグ BWV997より
無伴奏ヴァイオリンパルティータ第1番より
サラバンド
ブーレ
ドゥーブル
無伴奏チェロ組曲第3番 BWV1009全曲(デュアルテ編)
リュートのためのプレリュード BWV999
シチリアーノ(無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番より)
ガヴォット・アン・ロンド(無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番より)
シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番より)
没後三十年を過ぎた今なお話題にのぼること多いアンドレス・セゴビア(1893-1987)は、ギター愛好家ならずとも少しクラシック音楽をかじっている輩ならばその名を知る存在だろう。今日のクラシックギターというジャンルそのものを形作り、20世紀の世に認知させた功績は計り知れない。演奏スタイルの好みは別としても、多くのギター弾きにとって「神」と言われるほどのその存在の大きさは認めざるを得ないだろう。しかし不思議なことに、そのセゴビアの残した多くの録音は未だに謎が多い。
多少の前後はあるが、ほぼ同時期にクラシックギター界を牽引したジュリアン・ブリーム(1933-2020)、ジョン・ウィリアムス(1941-)、ナルシソ・イエペス(1927-1997)らの録音は近年まとめられ、コンプリートボックスとして発売された。しかし、より多くのセールスが期待できるセゴビアの録音は相変わらず細切れにしかリリースされない。これにはいくつかの理由があるようだが、何とか全録音を形に残したいという思いは随分昔からあったのだろう。このワーナーパイオニアによって編まれたコレクションは、そうした愛好家の喉の渇きを癒すかのように企画され、当時可能な限りの手を尽くして編纂された。何でも、米国MCAの倉庫でオリジナルのテープを探す作業は困難を極め、また実際に音を出してみると録音レベルの差が大きく、同一のディスクに収めるには大変苦労したようだ。様々な理由があって、いくつかの盤は発売時のオリジナルディスクの構成を再現出来ず、結果としてともかく全録音を再編集して全17巻にまとめたようだ。きょう取り出した第1集も「バッハ作品集」と題され、1954年・1961年(NY録音)、1967年・1968年(マドリッド録音)の録音をまとめたものになっている。他のギタリストとは異なり、セゴビア・コンプリートコレクション(オリジナルLPジャケット使用)というのは、もはや望むべくもないのが現実のようだ。
さてこの盤。眼目はチェロ組曲第3番全曲(デュアルテ編)とシャコンヌ(セゴビア編)だろう。20世紀前半、ようやくクラシックギターをいう世界が認知され始めた当時にバッハの組曲全曲を通して弾くことは極めて稀だったろうし、シャコンヌが1935年にセゴビアの手によってパリで演奏されたことが、ギター界の一つの金字塔となったことは容易に想像できる。この盤の演奏そのものは、現代的視点でみると批判や苦言を免れないところが多々ある。しかし、こうしてあらためて聴いてみると、半世紀前の高校生時代には「酔っ払いにオッサンが弾いているのか…」くらいに感じていたこの演奏も多くのものを訴えてくる。ライナーノーツに故濱田慈郎氏が「ある過ぎ去った、しかも永遠に残される時代」の貴重な証言と称しているが、まったくその通りだ。
この盤の音源。バッハ:シャコンヌ 1954年録音。
無伴奏チェロ組曲第3番:前奏曲(プレイリストで全曲が続く) 1961年録音。
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