セゴビア・コレクション第2集「協奏曲集・スペインの城」



少し前に記事にした80年代終盤に当時のワーナーパイオニアからリリースされたセゴビア・コレクション。先日聴いた第1集をきっかけに、あらためて全17巻を聴くことにした。きょうは順番に従い、その第2集を取り出した。


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この盤のライナーノーツで故濱田慈郎氏がセゴビアの死去(1987年6月)について触れている。この盤のリリースが1987年か1988年だったから直前のことだったのだろう。濱田氏の記述の中でセゴビアが若い頃に生涯の目標と定めた四つの事柄が記されている。

一に、ギターを大衆的な民族楽器のランクから引き上げ、クラシックの楽器として通用させること。
二に、世界中のいろいろな作曲家に新しいギターのレパートリーを作曲してもらい、このジャンルを豊かにすること。
三に、セゴビア自身の演奏を通じ、なるべく広い範囲の人びとからギターの美を認めてもらうこと。
四に、世界の主要音楽学校にギター科を設置させること。

これらの目標は今日振り返ってみると、セゴビア94年間(1893-1987)の生涯にほぼ達成され、自分の目で確かめることができたと言える。この盤では特に二つめの目標の成果として、以下の収録曲通り、19世紀古典期のマウロ・ジュリアーニ以来途絶えていた管弦楽との協奏という大きなジャンルを開花させた作品が収められている。オケのシンフォニー・オブ・ジ・エアはトスカニーニ亡きあとの元NBC響。指揮のエンリケ・ホルダ(1911-1996)は50年代にサンフランシスコ響の音楽監督も務めていて、この盤の録音と同時期に「ある貴紳のための幻想曲」の初演をセゴビアと共に行っている。

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ロドリーゴ:ある貴紳のための幻想曲*(1958年5月NY録音)
 1.ビリャーノとリチュルカーレ/2.エスパニョレータ~ナポリ騎兵団のファンファーレ/3.たいまつの踊り/4.カナリオ
M・ポンセ:南の協奏曲*(1958年5月NY録音)
 1.アレグロ・モデラート/2.アンダンテ/3.アレグロ・モデラート・エ・フェスティーヴォ
モレーノ・トローバ:スペインの城(1969年12月スペイン録音)
 1.トゥレガノ(山歌)/2.トリーハ(悲歌)/3.マンサナーレス・エル・レアール(美しい乙女に)/4.モンテマヨール(静思)/
 5.アルカニス(祝祭)/6.シグエンサ(王女は眠る)/7.アルバ・デ・トルメス(吟遊詩人の歌)/8.セゴビアの王城(召集)
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*エンリケ・ホルダ指揮シンフォニー・オブ・ジ・エアー


さきほどからマヌエル・ポンセ作曲「南の協奏曲」を聴いている。
マヌエル・ポンセ(1882-1948)はメキシコ近代音楽の父といわれ、多くの作品を残した。とりわけギター音楽に関しては1920年代以降セゴビアとの交流の中から、現在もギタリストにとって重要なプログラムになっているいくつかの曲を残した。「南のソナチネ」や擬バロック形式の組曲などはその代表的なものだ。そのポンセが書いたギター協奏曲「南の協奏曲:Concierto del Sur」は1941年セゴビアに献呈され、同年セゴビアの独奏、ポンセ自身の指揮で初演された。

ポンセの楽曲は総じて新古典主義の作風をとる。この曲も定石通り急緩急の3つの楽章から成り、全編を通して古典様式に近代的和声を散りばめ、感興と機知に富む。ギター特有のラスゲアード奏法(弦をかき鳴らす奏法)や、明確なリズムの刻みなどに、ギターの故郷としてのスペイン情緒も盛り込まれている。特に両端楽章にその傾向が顕著で、フランス仕込みの色彩的なオーケストレーションと相まって華やかなフレーズが続く。

録音当時65歳のセゴビアはまだまだ技巧の切れもよく、初演者の自信を感じさせる弾きっぷりで、この曲の楽しさを十分伝えてくれる。録音はセゴビアのソロがオンマイクでほとんどエコーなしで録られ、バックのシンフォニー・オブ・ジ・エアのオケパートはかなり残響豊かで、パートごとに遠近感を感じさせるなど、まずまず満足できる水準。数少ないギターのための協奏曲、中でも20世紀以降の作品としてはロドリーゴの「アランフェス協奏曲」が図抜けて有名だが、テデスコの協奏曲と並び、このポンセの曲も近現代を代表するギター協奏曲として貴重な作品だ。


この盤の音源。ポンセ「南の協奏曲」YouTubeにいくつかアップされているこの曲の音源のうち、この音源が手持ちのCDにもっとも近い音質だ。



同 モレーノ・トローバ「スペインの城」全8曲



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お久しぶりぶり~

南の協奏曲のオケスコアは、かつてピアミュージックのサイトで閲覧できましたが、今はIMSLPからダウンロード可能です🎵

Re: お久しぶりぶり~

ぶりぶり…Mazaさん、こんばんは。
IMSLPも収録数増えていますね。オリジナル楽譜のアーカイブもさることながら、編曲譜でときどき拾い物もあって、見始めると、あっという間に時間が過ぎます。
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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