マーラー交響曲第1番ニ長調「巨人」



先日ある知人が言っていた。「扇風機を片付け、代わりに炬燵を出した」…まったくだ。秋の風情はどこへやら、夏が終われば冬到来。一体どこの国だろうと思ってしまう程だ。気付けば十月も末。今月は少々慌ただしく過ぎた。来月はもう少し余裕が出来るはずだが…。そんなことは考えつつ本日も業務に精励。帰宅後一服して、こんな盤を取り出した。


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マーラーの交響曲第1番ニ長調。ラファエル・クーベリック( 1914-1996)指揮バイエルン放送交響楽団による1979年11月のライヴ録音。20年前、Auditeレーベルからリリースされたライヴ録音中の一枚。同じコンビによるマーラー第2番、第5番などもリリースされた。

マーラーに触れたのはクラシックを聴き始めて2年程たった70年代半ば頃だった。四畳半の下宿にセットしたこれ以上ないというくらいにチープなオーディオセット。貧乏学生としてはレコードを自由に買えず、FMエアチェックで録音したカセットでせっせと聴いたものだ。今思うと涙ぐましい程だが、結局あの頃が一番どん欲に音楽を聴き、頭と身体に定着した。マーラーの交響曲で最初に親しんだのは第4番。その後すぐに第2番や第8番などの大作に聴き入りようになった。復活や一千人…に繰り返し接していた当時、第1番はややかったるく感じたのだろう、あまり真剣に聴いた記憶がなかった。この曲の良さをしみじみ感じるようになったのは、その後随分経ってからのことだ。

実は少し前から旧友とのメール交換の中でこの曲が話題になり、久しぶりにこの盤を取り出した。昔からマーラー指揮者として定評があり、60年代には交響曲全集も完成させていたクーベリック。一方でスタジオでのセッション録音は燃焼度が低くイマイチという評価もあった。かつて70~80年代にFMで流される現地のライヴ演奏などを聴くと、万事に中庸な穏健派というレッテルが貼られる根拠は一体なに?と首をかしげる程、熱の入った演奏だった。そんなこともあって2000年前後、Auditeレーベルからリリースされた一連のライヴ録音は大そう話題になった。

このライヴ録音、60年代のスタジオセッションから大きく変容しているというところはない。全体として過剰な演出はないし、パートバランスや音響もよく整っている。同時に、細部の念の入れよう、取り分けテンポやダイナミクスの設定には、完成度の高いスタジオセッションの基本を引き継ぎながらも、ライヴならではの大胆さも加わっている。つまり完成度と即興性を併せもつ理想的な演奏だ。録音も優秀で、このコンビの本拠地ミュンヘン:ヘラクレスザールに響き渡る豊かなホールトーンと、同時によくブレンドされた弦楽群、チャーミングな木管群、低弦群がピアニシモで奏するピチカートの基音も十分聴き取れるなど、細部の解像度も良好。マーラーの交響曲を聴く楽しみを堪能させてくれる。


手持ちの盤からアップした。第4楽章の冒頭とフィナーレ。


同じコンビによる映像。この盤の録音と同時期(おそらく1980年)のものと思われる。


第4楽章フィナーレの聴き比べ



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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