バッハBWV853
秋たけなわの週末土曜日。コロナ禍鎮静化もあって、当地群馬県内の温泉地などは随分と賑わっている様子。テレビのインタヴューで旅館亭主が、「関西やさらに遠方からもお越しいただいている」と語っていた。地元民のぼくは、いつでも行けるからと重い腰が上がず、きょうも野暮用少々で日が暮れた。さて週末の晩。このところ少々慌ただしかったこともあり、今夜はクールダウンしようと、こんな盤を取り出した。

ヴァレリー・アファナシエフ(1947-)の弾くバッハ平均律クラヴィーア曲集第1巻。1995年録音。手持ちの盤は十数年前、日本コロンビアの廉価盤CREST1000シリーズで出ていたときのもの。全24曲が2枚のCDに収められている。今夜はその中から、もっとも長く、かつ調性記号の多そうな曲を選んだ。アファナシエフの場合は第1集第8曲変ホ短調BWV853がそれにあたり、前奏曲に5分12秒、フーガに7分46秒を要している。調性は変ホ短調でフラット6つ(フーガ部は嬰ニ短調としてシャープ6つで記されることことが多い)。
いつもながら静かに深く沈み込むバッハ。ここ数年、平均律といえばもっぱらアファナシエフを聴いている。グールドの演奏が一曲一曲に意を尽くして様々なアプローチを展開するに対し、アファナシエフは平均律全曲に対して統一したコンセプトで臨んでいるように感じる。曲想の違いは解釈ではなく、もっぱら曲そのもの、バッハの楽譜そのものの違いによって表出される。だからどの曲を聴いても、同じ向かい合い方が出来るように感じるのだ。アファナシエフのバッハへのアプローチは技法的にはロマンティックに寄っているだろうか。和音はやや分散和音的に弾く。楽曲全体に過度の緊張感や厳しさを持ち込んでいない。このBWV853に対しても同様だ。深く静かに進むが、厳しさはなく、どこかやるせない寂しさとあきらめが付きまとう。
手持ちの盤からアップ。BWV853
ホ短調の移したギター版の前奏曲
ヴィラ・ロボスがチェロ合奏用にアレンジした前奏曲。
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アンドレイ・タルコフスキーの映像とリヒテルの演奏
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