群馬交響楽団第573回定期演奏会



きのう土曜日、群馬交響楽団(群響:グンキョウ)定期演奏会へ。群響の演奏会は昨年夏の東京公演を聴いて以来、半年ぶり。本拠地高崎での定期演奏会は昨年5月以来だ。


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ブルックナー/交響曲第8番ハ短調WAB108(ハース版)
広上淳一指揮・群馬交響楽団
2022年1月22日(土)16:00~ 高崎芸術劇場
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2019年秋、群響にとって念願だった新本拠地となる高崎芸術劇場が完成。さて新たな出発…と思っていた矢先にコロナ禍に見舞われた。日本中の多くのオーケストラ同様、2020年の演奏会はほとんどが中止を余儀なくされたが、昨年2021年の春以降はほぼ予定通りの開催にこぎつけた。今回は人気・実力ともトップレベルの広上淳一の指揮による大曲ブルックナーの第8交響曲。広上氏の指揮は2014年にブルックナーの8番は2016年に、それぞれ群響の演奏で接している。

ブルックナーの交響曲に初めて触れたの二十歳になった頃。4番、5番、7番、8番、9番と多くのブルックナーファン同様のステップで親しんでいった。取り分け第8番には心酔し、当時N響を振ったマタチッチのFMエアチャックを繰り返し聴いた。この曲を聴くと必ず、数十年前のこととなった当時の光景を思い出す。きのうもそんなかつての心象を思い起こしながら会場に向かった。

年末年始の頃は楽観的な気分もあったコロナ禍だが、結局第6波到来。この日も県内感染者が急増する中での開催であったが、例によって会場運営は不安のないもので、2階席端に陣取り開演を待った。定刻の16時を少し回って団員入場。続いて広上氏が現れる。客電が落ち、大曲90分一本勝負の開始となった。

広上氏のキャラクターとブルックナーの交響曲という組み合わせ。昨今の事情に疎いぼくにとっては少々予想がつきにくいものだったが、第1楽章冒頭のフレーズが始まってすぐ納得した。陽性のブルックナー…そんな言葉が思い浮かんだ。いや、これまでブルックナーを陰性と思っていたわけではないのだが、どうしてもかつての巨匠時代の演奏、聴き親しんだ若い頃の心象、敬虔な宗教徒ブルックナー、そんないくつかの要素から成り立っていたぼくのイメージがいささか古臭いのだろう。ブルックナーの交響曲いうと俗世とは遠いもので、その響きは大規模な管弦楽を駆使しながらも抑制的で、曲想は泰然自若、悠揚迫らず…そんなイメージを持っていた。広上氏の解釈はそんな先入観を端から取り払う。

この曲で重要なホルンパートは常に明るい音色でのびのびと吹く(時折りピッチが不安定だったのが残念)。ローブラスもやや強め。管楽器群にやや押され気味の弦楽群もフレーズの抑揚は明瞭で、しばしばスフォルツァンドの強めのアクセントが加えられる…そんな具体的な音響から出てくる音楽は終始明るく前向きだ。同時に全体としてのフレーズの肌合いはレガートで、第2楽章スケルツォなどは、かつてのカラヤン風のノンアクセントで滑らかな歌わせぶり。マタチッチのようなゴツゴツした感触はない。第3楽章も天上の音楽というよりは、世俗の美しく楽しい歌をイメージする。終楽章のコザック隊の進軍は、戦いに向かうというよりは、勝利の凱旋のように響く。

…と、こんな風に書くと少々ネガティブな印象だったのかと思われそうだが、そんなことはない。長丁場を飽かずに聴かせる曲作り、古いイメージをまとったブルックナー象からの解放等、大規模な管弦楽曲として、先入観なしにこの曲を再現すると、こういう響きになるということを実感しつつ、90分一本勝負を堪能できたのは、広上氏の解釈あってのことだ。群響もそれに応える好演。新しいホールの良好なアコースティックも得て、新年に相応しい明るく前向きなブルックナー体験だった。


ブルックナーあれこれ。よく編集された紹介動画。


マタチッチ&N響によるブルックナー第8番第2楽章。 懐かしい80年代N響の面々。


まろ×淳一


広上氏のリハーサル。例によって!マークが出るが、「YouTubeで見る」をクリックすればOK。



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Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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