セゴビア・コレクション第8集「ソル・ジュリアーニ:作品集」
連休明けの月曜日。きょうは在宅勤務。いつもは道楽部屋と化す自室にこもり、難題に取り組んだ(ウソ言うな!)。
さて、今夜は久々にギター。少し前から聴き直しているセゴビアの録音。この盤を取り出した。

80年代終わりに当時のワーナーパイオニアが企画しセゴビアのMCA録音を集大成した「セゴビア・コレクション」中の第8集。19世紀の古典ギター隆盛期のもっとも重要なギター曲作曲家だったフェルナンド・ソル(1778-1839)とマウロ・ジュリアーニ(1781-1829)の作品がまとめられている。もっともジュリアーニの作品はハ長調のソナタ作品15・第1楽章のみで、他はすべてソルの作品。ポピュラーなグラン・ソロやモーツァルトの主題による変奏曲、ソナタ作品22や作品25からの抜粋、アンダンテ・ラルゴやいくつかのメヌエットやワルツなどが収められ、録音年代は1952年から1967年と、かなり長期間に渡ってなされたものがピックアップされている。
一般の音楽ファンにとって今日のクラシックギターがどんな風に映るのか、また「クラシック」という言葉を冠している意味をどんな風に感じるのか、よく分からない。反対に「どうしてクラシックギター…と言うのか?」と問われたらどうしよう。「19世紀のクラシック音楽にそのルーツがあるから」というのがもっとも適当なように思うがどうだろう。
現代のギターと大きさや形は多少異なるが、単弦6本から成るギターが成立したのが18世紀末辺り。そしてハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンといったいわゆるウィーン古典派隆盛期の作風によるギター曲が作られたのが19世紀前半にあたる。その時代の音楽を今日まで伝え、再現しているのがクラシックギターの基本だ。当時19世紀初頭には相当数のギター曲が作られ、市井の楽器として人気も得た。中でもこのアルバムの収められているフェルナンド・ソルとマウロ・ジュリアーニの作品はその作風や充実度、また今日まで引き継がれていることなど、クラシックギターのルーツを代表する作品だ。
アンドレス・セゴビア(1893-1987)は19世紀半ば以降20世紀初頭まで、いつしかクラシック音楽の保守本流から離れ「酒場の楽器」「サロンの楽器」として生きてきたギターを他のクラシカルな楽器と同格の地位に引き上げるべく努力したとされる。そのために古いリュートやビウエラの曲に始まり、19世紀古典ギター隆盛期の作品、多くのクラシック音楽からの編曲、また20世紀現代の作曲家による新作など、あらゆる時代の作品をセゴビアの個性で弾いてきた。この盤ではその広範囲のレパートリーの中でもクラシックギターのルーツともいうべき作品が取り上げられている。
ソルの作品は今日でも人気が高い。エチュード、メヌエットやワルツの小品、きちんとした様式をもったソナタや少しロマンティックな作風の幻想曲など、初心者からプロフェショナルまで愛奏されている。同時代の幾多のギター曲作曲家に比べ、明らかに音楽的な感興に富み、他のクラシック名曲と比べても遜色のない和声感や様式感をもっているのが人気の最大の理由だ。そういう意味では、一般のクラシック音楽愛好者にはギターという楽器によるクラシックの表現がどういうものかというサンプルとして、またギター愛好家にはギター曲以外のクラシック音楽全般への理解を広める足掛かりとして、ソルあるいはジュリアーニの作品は格好の題材だ。
こうした古典曲に対するセゴビアのアプローチには賛否両論ある。あまりにロマンティック過ぎるという大方の見方は間違ってはいない。しかし、セゴビアと同時代の音楽家にはさほど珍しくない解釈だったろうし、そうした時代性もギターのみならずクラシック音楽全般で20世紀前半には広く受け入れられたものだったことを考えれば、セゴビアの解釈はひとつの時代の証しとして貴重だ。そして何より、出だしの一音だけでセゴビアと分かるその音色は、グローバル化してすべてが均一になった現代ではもはや聴くことの出来ない唯一無二のギターサウンドだ。
手持ちの盤からアップ。ソルのグラン・ソロ 1955年録音
ドロップDでチューニングされたニ短調の序奏で重々しく始まる。セゴビアが使っている版の和声は他の版に比べシンプルだが、これはこれで悪くない。アレグロの主部では壮年期セゴビアの技巧も冴え、中々の快速調で推進力に富む。
同 モーツァルトの主題による変奏曲 1952年録音
ホ短調の序奏を省略し、主題の提示で始まる。変奏曲という性格もあって、セゴビア節全開。好みが分かれる演奏だ。
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